熱い涙



何でナナシは不機嫌なんだ?分からねぇ…


『おい、ナナシ。』


ちょいちょいと肩を叩いて話しかける。と言っても手話だ。


「ニコラスなんてしーらなーい。」


彼女が顔を背ける直前にかろうじて見えた口唇。だから、何でそんなに剥れてんだ?


「おイ…」


めんどくせぇが、声を出したのに聞こえないふりをするナナシ。あぁ、めんどくせぇ…


「こッ、ムけ。」


頭を掴んで、無理やり俺の方に顔を向けさせる。痛かったのかナナシは顔を歪めていた。


どオ、した?」


慌てて顔を下げようとする彼女の顎を自分の手で固定する。気まずそうな瞳を真直ぐに捉えてやれば、整った眉が寄せられた。


「アレックス。」


「あ゛ァ?」


「だから、アレックス。」


いや、分かるわけねぇだろ。全く話が見えない。俺はウォリックほど頭よくないんだよ…


「最近ニコラス、アレックスのことばっかり見てる。」


こいつ馬鹿だ。


「でもっ、アレッ、くすのごと、きらいにぃっくなりだぐ、んぐっないよぉ。」


本当に馬鹿だ。

泣きだしながらも心の内を吐露するナナシ。馬鹿だ、コイツ馬鹿だと思っていてもその涙が俺の心を熱くする。


酷い顔をしてえぐえぐしている馬鹿を自分の胸へと引っ張った。力加減ができているかなんて、気にしないでいいだろ。


「馬か。」


ナナシが何か言っている。だが、口唇が読めないから分からない。


「ぁほ。」


気にせず続ければ、シャツを掴む力が強くなった。


「ス、ダ。」


びくりと体が震え、一層埋められた顔。シャツに滲みこんだ涙にさえ熱く感じた。




熱い涙




あとがき
すきって言わせたかった。嫉妬系を書きたかった。そったらこうなった。

難しーですね。


駄作でしたが此処まで読んで下さってありがとうございました!!!




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