君の体温
「わー!!」
便利屋にナナシの大声が響いた。
「どったのねーちゃん!?」
続いてドアを破壊せんばかりの衝撃音と共に、ウォリックの緊迫した声が聞こえる。そして俺も後を追って地下から上がった。そこで見た物は―
「ウォリックー見てー!!」
「ねーちゃん?」
「ゆきー!!!」
呆然とする相方と、空から舞い降りる雪に興奮するその姉の姿。
「あー、うん…雪だねぇ。」
「きれー。」
うっとりと雪を見つめるナナシ。周りの心配なんてお構いなしだ。
「あ、ニコラス!!」
俺の存在に気がついたナナシが、おいでおいでと手招きをした。
『なんだ?』
「雪、きれーだよ!」
『さみーよ。』
「えー。」
「俺ちゃんも寒いべよ。」
「むー、ウォリックの人でなしー。」
「え、俺ちゃんだけ!?」
窓の外を眺めながら騒ぐ俺たち3人。こんな時にナナシがいることで、俺とウォリックは
此処に留まることができているとつくづく思う。
「おねーちゃん悲しーよー。」
「ちょ、それはこっちのセリフだべさ!!」
「わっ! ニコラス?」
くだらない兄弟喧嘩がつまらなく感じられて、傍にいたナナシに抱きついてみた。
「ヘイ、ニコラスー。もしかして寂しかったりしちゃったぁ?」
「そうなの? じゃあ、ぎゅーっ!!」
何も肯定していないのに、そうだと決めつけられた。それでも不満に感じなかったのは、
抱きしめ返してきたナナシの温もりがあったから。
君の体温
(積もるかなー。)
(炭酸買いに行けなくなる。)
(つっもれー!!)
あとがき
ニコラスで妄想してたら、ウォリックのお姉さんが出てきました。そして雪をテーマに書くつもりが、そんな感じがしない物になってしまいました。おまけに、いつも通りの不思議な終わり方…
駄文でしたが、此処まで読んで下さってありがとうございました。