求めるもの

「こんにちは、ニコラスさん!」

『よう。』

「今日もいつもの炭酸ですか?」

『ん、』

「毎度ありがとうございます!」

よく行く店の娘。名前は確か、ナナシだったか。

俺がタグ付きだと知っても変わらない女。







「いらっしゃいませ!」

(同じくらいの女。)

「何をお求めでしょうか?」

店員の女が話しかけた後、近くにいた女客が血相を変えた。

「!? ナナシちゃん、こっちおいで!そいつタグ付きだよ!!」

(またか…)

「でも、お客様です!」

「ナナシちゃん…勝手にしな!」

そう言って客の女は店を出て行った。

「いィ、のヵ?」

「はい! 心配は御無用です!!」

「…ソぅか。」

「ふふふっ、改めまして何をお求めでしょうか?」

それがナナシとの出逢い。血に染まった俺には眩しい笑顔が印象的だった。





「お待たせしました!」

『カネ。』

最初はわからなかった手話も、今は完璧にマスターしているナナシ。

「はい、確かに頂きました!」

『最近どうだ?』

支払いが終わった後のたわいない会話。そのたび、他と違う扱いをしていることに我ながら驚く。

「最近、鳥が店先に巣を作ったんですよっ。」

『ふーん。』

「ふふふ、ニコラスさんには退屈でしたか?」

俺からしたら何が面白いのかわからないことにも、笑いながら報告する彼女。

そんなナナシに、胸が痛んだ。



求めるもの


(日の光のような、そんな笑顔に)

(眩暈がした)





あとがき
初ニコラスです。手話と実際に話している所、心の声、使い分けが難しかった…


拙い文章ですが、読んでくださってありがとうございました!

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