夢を渡る
デリコが、ナナシ姉と話したいことがあるそうなんです。
ヤンからそう言われて、デリコを捜索中
「何処にいるんだー。」
まあ、色々あって恋人同士になった私たち。お互い口下手な所為か、未だにこうやって
他人を介するやり取りをしている。
『口下手、だけじゃないか…』
自分の男勝りな性格も、少なからず影響を与えているだろう。それから…
デリコ自身の謙遜。
『恋にそんなもん、必要ないと言いたいところだがなぁ。』
健常者に、黄昏種の心の内なんて分からない。理解してやりたくても、理解できないもどかしさ。
『恋愛ってこんなんだっけか?』
考えれば考えるほど、悪い方へと向かっていく思考。
『だぁ、もう!!とりあえず、探そう。』
屋敷内を駆け回っているが、一向に見つからない。
『行き違いになってんのかなぁ?部屋戻ってみるか。』
これじゃあ埒が明かない。いったん部屋に戻って、作戦を練ろうと思う。
「んぁ?」
部屋のドアを開けてみれば、まさかの光景。
「此処にいたんかい…」
灯台もと暗しとはこのこと。捜し人、デリコは私の自室にいた。
「捜したよー、って、寝てる?」
入っても、声をかけてもソファに腰かけたまま、反応が返ってこない。不思議に思って、近づいて覗き込めば、安らかな寝息を立てている。
『なんだかなぁ。』
私だから起きないのか、それとも本気で気付いていないのか。後者だと危険だが、前者はちょっとばかし気恥ずかしい。
「デリコ。」
男の割に整った顔を観察しながら、そっと名を読んでみた。
『起きるか?ってか、以外にまつ毛長いな。髪と一緒の色、羨ましい…』
「んっ、」
身じろいだデリコ。
『起こしたか、』
「…ナナシさん?」
覚醒しきっていないのか、放心している。
「ごめんよ、起こしたな。」
「ナナシさん」
「なっ、」
まだ夢うつつなのか、デリコは名前を呼んだかと思うと、抱きついてきた。
「ちょ、くるしっ」
離さないと言わんばかりに、きつくなる抱擁。黄昏種の力でされると、呼吸困難どころではない。
「めを、さませっ。なかみ、でるっ!」
もがいてみるが、びくともしない。
「いいかげ「愛して、ます。」
耳元で発されたそれは、ダイレクトに脳内に響いた。
「…愛してるんです。」
それだけ言って、デリコはまた寝息を立て始めた。
「寝ぼけてる時は素直なんだねぇ…」
意外なデリコの一面を知った私も、彼に身を預けたまま目を閉じた。
夢を渡る
(起きたら言うけれど、)
(私も愛してる)
(夢の中でも伝わればいいのに)
あとがき
ヒロインの口調があやふや。