幼い信頼
「珍しいですね、お昼寝されてないなんて。」

マスルール様の侍女になり、数年。相変わらずこの方は、姿を消される。お昼寝をなさるために…

今日もてっきりそうかと思えば、自室でぼおっとしていらっしゃいました。

「明日は大量の南海生物が降ってきますね。」

「…」

随分と無礼なことを申しましたが、無言、無表情のままマスルール様は視線だけをお寄越しになります。

『どうかなさったのかしら?』

「ナマエ、」

名前を呼ばれ美しいガーネットに視線を合わせると、何か仰りたいご様子。

「如何なさいましたか?」

此方に来い

そう言われているような気がしたので、距離を縮めましたところ、腕を掴まれ逞しい筋肉へと倒れ込んでしまいました。

「マスルール様?」

すりすりと首筋に顔をお埋めになっていらっしゃいます。

「あの、くすぐったいのですが…」

押し返そうにも、所詮は女。ましてや、私は侍女ですので、できるわけがございません。

「マスルール様?」

もう一度呼びかけてみましたが、何の効果もございませんでした。

少し視線を下げると目に入る赤

『まるで子どもの様ですね。』

もごもごと動くそれが、子どもが甘える時の仕種に被ってしまいます。

数年間お側に仕えて来て初めての出来事。無礼かと思いましたが撫でさせて頂きました。

「ナマエ…」

名前を口になさるのと同時に強まった抱擁。なんだか信頼していただけたようだと感じた昼下がり。


幼い信頼



(もぞもぞ)

(子ども、と言うか動物…)



あとがき
短編は甘くしてみようと踏ん張った結果、他同様意味不明になりました。

こんなんでしたが、此処まで読んで下さってありがとうございました!!



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