獲物と捕食者
「あの、平門さん!」
「こんにちは、えっと、「ずっと好きでした!!」」
「よよかったら…」
研案塔からの帰りがけ、平門が看護師の女の子に告白されていた。踵を返し元の通路を歩く。
『告白して、相手を求めて、いったい何になるんだろうか?』
恋愛はよく分からない。求めて、求められて。
でも、どこか虚しい。無限でも、永遠でもない関係性。
「覗き見とは良い趣味だな、ななし。」
「平門。」
いつの間にか目の前には平門の姿があった。どんな手品よ。
「直ぐに立ち去ったから覗き見ではない。」
「彼女には丁寧にお断りしたさ。」
「はぁ?可愛らしい子だったじゃないか?」
「確かに可愛らしい子だったが、残念ながら。」
ほら、やはり複雑怪奇だ。いや、この男だからか?
「ははは、分かっていないな。」
「何故分からなければならない?」
面食らった表情の平門。珍しい事もあるものだ。
「成程、これは思っていた以上に…楽しいな。」
皆目見当もつかないが、鈍く光るアメジストに嫌な予感がした。
獲物と捕食者
(『覚悟しておくといい。』)
(『悪寒が…』)