2.5: 神様の日常
ななしの目が覚めてから数週間が経った。
平門との一件を聞いた後、彼女に覚えていないかと尋ねないように御触れを出した。極度のストレスを与えるのは危険だと判断したからだ。
大事を取って病室生活を続けさせている。もしかしたら、そんな期待が見え隠れするようだ。
最近は、私や療師が頻繁に病室を訪ねている。経過を診るためだ。
「よくもない、ということですか?」
時間が空いたので来てみれば僅かに開いた扉から平門の声が聞こえた。こいつも頻繁に彼女の病室を訪れる。仕事はきちんとこなしているようだが、こいつまで倒れやしないかと疑ってしまうほどだ。
「…そうですね。」
私たちからすると、平門の訪問は良くも悪くもある。
ななしは平門を庇って負傷した。そこまでしたのなら、こいつと接することで記憶が戻るかもしれない。これは良い面だ。
しかし、
「御不満そうなお顔ですね。」
「元からです。」
二人の会話は続いていく。
「そんなに俺が、お嫌いですか?」
平門の声色が少しだけ変わった。
『あの馬鹿者が…』
「…貴方は誰を見ているの?」
悪い面―
平門自身が、一番のストレスを与える存在であるということ。
「今日は帰ります。」
お大事に、そう言って病室から出てきた平門。
「お前は何をしてるんだ。」
「燭さん。盗み聞きは頂けませんよ?」
「はぐらかすな。」
「…」
「彼女に悪影響だと判断したら、即刻お前の入室を禁止するぞ。」
珍しく平門の表情が少しだけ歪んだ。
神様の日常
(期待を捨てられない愚者)
あとがき
はいっ!2.5は燭先生視点でしたー!!
初めは1.5と同じく、平門さん視点にしようと思ってたんですがね。書いてるうちに燭先生になってましたw