ツンとデレ
『まるで機械みたい。』

黙々と仕事をこなす私に付いた渾名。こっちは好きでそんな風にふるまっているわけではない。コミュニケーション能力が乏しいがため、自ずと周りとの会話が無くなり孤立した、唯それだけだ。

『何話していいか分かんないし、丁度いいや。』

心の中でそう独りごち、今日もひたすら自分に課せられた仕事と向き合う。因みに言うと、今の姿勢が評価されてしまったようで平門さんからは他より多く仕事が回ってくる。別に嫌なわけじゃないけど、やっぱりしんどい。

「あれ、ななしちゃんまだ残ってたの?」

声をかけてきたのはニャンぺローナの中の人、與儀さんだった。この人は私と違い対人能力に長けている、と勝手に思ってる。蔭口の対象に躊躇なく話しかけてこれる人だ。ん?もしかしたら単に天然なのかもしれない。

「もう終るんで。」

「え〜、もうってまだこんなにあるじゃん!?」

大袈裟に驚いているが、たかだか書類のひと山。外の任務に比べたらなんてことない。うわーと驚いている彼をよそに書類をさばいていく。無視しておけば他の人みたいに居なくなるだろうし。だが、そんな考えを知ってか知らずか、與儀さんは隣の席に腰を落ち着けてしまった。

「ななしちゃんてさ、あんまり喋んないよね?」

「…」

「あ、別に悪いってわけじゃないんだよ!!」

黙り込んでしまった私をみて、慌てて弁解する様子がなんとなく面白くて少し笑ってしまった。するとぽかんと呆けた顔のまま固まってしまった與儀さん。

「そっか、」

小さく絞り出された声に疑問符を飛ばしていると、ぱぁっと効果音が付きそうなくらい彼の表情が明るくなる。

「花礫君みたいに、恥ずかしがり屋さんなんだね!」

「は?」

「へへっ、悲しい時とか、楽しい時に表情に出すのが恥ずかしんでしょ?大丈夫だよ〜、俺ちゃんと分かったから〜。」

違う。誰かこの人に違うって言って欲しい。恥ずかしいのではなく、どう反応していいのか分からない。たったそれだけの事を結局言い出せず、次の日同僚からデレの全くないツンの称号を頂いてしまった。


ツンとデレ。

(いいえ、違います。)

(表し方が分からないんです。)

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