くっころは世の真理
「クッ、コロシテ!」

色んな意味で疲れに疲れ、虚ろな目をした学生たちの感想は、要約すれば『マジか。良く女性騎士とか、姫騎士が敵勢力に言うようなセリフを現実で聞くことになるなんて』であり、満場一致で『誰か昨日のフラグ叩き折ってこい!』である。

「はーい!皆しゅーごーう!!」
「わ、五条先生!」
「よそ見とは、良い身分だなっ!」
「げっ。」
「しゃけ!」
「テメッ!このぉぉぉぉおおお!!」
「そぉれーーー!!」

年末も差し迫った12月23日。2年'sとチキチキ受身大会(死ななければ何でもアリ!)をやっている最中に、グラウンドの端から参加者、特に受身する側の1年'sからしたら殴りたくなるような掛け声が響く。その声に三者三様の反応を見せながらも、渋々その男、教師である五条悟の元へと向かった。

「皆、明日何の日か知ってる?そう!クリスマスイブ!クリスマス当日は任務ある子もいるからね!そこでこちら、GLGからのサプライズプレゼントでーす!」

ジャンジャカジャーンと目隠しの下でウインクでもしてそうな五条が手元にフリップを掲げる。そのフリップを見た学生たちは、暫しの思考停止の後に、全員が疑問符を口にした。リボンやら星やらが書かれた、嫌にファンシーなそれには「対人戦闘☆彡」と大きな丸文字の羅列が。

「ふふん、あまりの嬉しさに声も出ない!僕ってばなんて罪作り!」
「いや、センセー、それさ…。」
「今やってることと変わらなくないですか?」

脳内ピンクなワールドに浸る五条に対し、言いにくそうな虎杖を遮って、伏黒がぶった切る。苦笑いの虎杖を含め全員が頷く。対人戦闘と言うのであれば、それは今1年と2年が行っている訓練もそのカテゴリである筈。それをわざわざ、クリスマスプレゼントとして提示する?てか、全然プレゼントじゃねぇ。コイツ、プレゼントの意味分かってんのかしら。混乱する学生を尻目に、チッチッチと否定の意味で人差し指を振る五条。

「いやいや、もっとエッグんん゛、スッゴイのだから!」
「おい、コイツ今エグイって言ったぞ。」
「言ったな。」
「しゃけ、しゃけ。」
「スッゴイのだから!楽しみにしててよ!」
「五条先生と戦うとか?それだったらスッゲー楽しみ!」
「残念悠二!ハズレでーす。」
「うわ、ウゼェ。オラ、詳細吐けよ。」
「ちょ、野薔薇ガラ悪っ。」
「どうせ、相手呪術師なんですよね。こっち学生なんです。大人しく吐いてください。」
「ハハッ、恵もガチじゃん。ウケる。」

予想以上の食いつきだと内心驚く五条へ、1年'sはそれぞれの言葉で『クリスマスに負けるとかありえない』と返す。それを見ている2年'sも、不適に笑う真希が代表して、ボコってやるよと言い切る。五条は旨く事が進んで、内心万々歳だ。

「んじゃ、ヒントね!相手は1級呪術師!近接戦闘タイプ(笑)だから!」
「当然のように格上連れてくるあたり流石バカ。」
「ねぇ、(笑)ってなによ?」
「近接と見せかけて、とか?」
「んふふふ、これ以上は明日実際体験してみてよ。僕でもアイツとやるのはキツイから。呪霊にしろ、呪詛師相手にするにしろ、いい勉強になるよ。」

なんせ激ヤバだからと残し、立ち去る五条。残された面子は震える。あの『最強』に激ヤバと言わしめる人物との対戦への恐怖?いや、皆目は爛々としている。それは強者と対峙出来る事への武者震いだった。

「紹介しまーす!僕の同期の中森日向子でーす!」
「中森日向子デース!ミナサン、ヨロシクデース!」

そして翌日自己紹介する人物を見て、再び硬直からの疑問符。@五条が連れてきたのは背格好普通の女性だった。Aその人は、修道服を着ていて呪術師と言うよりシスターだった。B話し方と顔立ちからして日本人ではないようだ。

「どっからツッコめばいいのよっ!!」
「同感。」

情報多可に激しく頷く学生たちに、ツッコミデスカー?と片言の日本語が飛んで来る。ヒュン――瞬間、空を切る音。

「ツッコミ、ドコカラデモ、ダイジョブデース!」

音の出どころは当然のごとく中森で。五条がそういう事だからと、悪魔のような笑みを口元に浮かべる。全く反応できなかった学生はただ思う。首への手刀はツッコミではない、と。

「ハーイ!」
「キャァァアア!!」
「パンダ!?」
「フッ!がら空きだぜ!」
「ンフ、コッチモデース!」
「待て待て待て、今のノーガード、クリティカルでしょ!?」
「こっちも良いの入ってんんのに、何であの人動けんの!?」
「グッ!え、ちょ!?」
「恵!」
「ソーレー!!!」
「おかか!?」
「うわぁあああ!!」
「退避、全員退避ぃぃぃいいい!!!」

五条悟は目の前に広がる光景を見て爆笑していた。投げる、蹴る、殴る。そのどれもで学生たちが、弾けるポップコーンのごとく宙を舞う。素手・武器ありと最初伝えた時は戸惑っていたようだが、2分もあればそれもどこへやら。と言うのも、単純な動きだけでなく、その異様なまでのタフさを思い知ったからだ。

「んふ、ヒヒッ、いくら殴っても倒れないってさ、マジホラーだよ。」

そう僕の同期中森日向子は呪霊も呪詛師も根を上げるほどのタフさを持つ。同期内でのあだ名は勿論『ゾンビ』。因みに何故修道服なのかと言うと、昔見た映画に出てきた『ゾンビシスター』に憧れてである。本職に謝れまでがセットのまさに五条の同期。

「あー、笑った。って、そろそろかな?」

あれを見て皆どんな反応するのかと五条の心は浮足立つ。今現在でもヤバイ日向子だが、実はもう一段上がある。彼女を『激ヤバ』と称するのはそれ故。なぜか?それは、あのモードに突入するとこちらの精神が死ぬからだ。

「急に攻撃が緩く!」
「ッフ。」
「なんか知らねえが、やるなら今!」
「ンン゛。」
「全員、畳みかけろっ!!」

悠二の拳、恵の木刀、野薔薇のピコピコハンマー、棘の蹴り、真希の長棒、パンダの拳。それらが中森を襲い、グラウンドは砂ぼこりに包まれる。

「やったか!」
「や、これ死んでない!?」
「あの硬さだ、死にはしねーよ。」
「てか、これで倒れてなかったらマンモスよ!!」
「おい、それフラグじゃ…」
「明太子!」

野薔薇グッジョブ。五条が見守る中、不敵な笑い声が聞こえだす。学生たちの顔には嘘だろとありありと書いてあるのが見て取れる。砂ぼこりが晴れていき、ふらついているものの以前立つシスター。ゾンビシスターその物と化した日向子が、グワリと顔を上げる。

「モット、モットデース!!!」

爛々と光り輝く瞳。薄紅色に染まった頬。見る場所がベッドでなら股間に来そうな表情も、それが戦場でなら縮み上がるわけで。絶句した学生たちには悪いが一言アドバイスを送る。

「皆ラストスパートだよー!」

絶望に絶望を重ねた、助けを求める複数の視線が五条に突き刺さる。分かる。分かるぞ若人たちよ。僕も初めての時そうなったからね!でも、対人戦修行(精神特化)にはもってこい!!

「因みに、ただのサンドバッグちゃんでーす!」

そう、ここからはただひたすら日向子を攻撃して削るだけ。それを察した学生全員の夢なら冷めてくれと言う叫び声が、呪術高専内に響き渡る。そして数週間の間この『クリプレ:ゾンビシスター襲来』は悪夢として1・2年'sを苦しめるのであった。



<ちょっとした説明>
耐久性に特化した術式。ちょっとやそっとじゃやられないぞ!
痛いの大好き。もっと殴って!蹴って!
これが合わさった結果、趣味と実益を兼ねた「ダメージを負えば負うほど増強される」を縛りにできた変態ゾンビシスター。命懸かってるのでハイリスクハイリターン。最後のサンドバッグモード入ってからの一撃は人間も爆散する。
好んでノーガードで攻撃を受けるので、家入からは嫌がられ、七海からはドン引きされている。
要するに、某異世界に祝福するアニメの彼女ですね。



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