チョコ味と言えど
「ハーイ!!」
「「「ぎゃあああ!!!」」」
「日向子じゃん。」

授業時間終了のチャイムと共に大きな音を立てて開かれた扉。そこに立つシスター服の女性を見た瞬間、1年生たちは絶叫した。突然の同期の訪問に五条も少しばかり驚いていると、皆のトラウマこと日向子が満面の笑みで教室内へと入ってきて一言。

「ハッピーバレンタインデース!!」

室内が凍り付いた。

「ちょ、誰か断んなさいよ!」
「釘崎がいけよ!!」
「おい、押すな!」

ひそひそと話す1年'sを尻目に、五条は今年もこの日が来てしまったかと意識が遠退く。

「あー、日向子、今年も手作り?」
「モチロンデース!」
「て、手作り…」
「なんてデンジャラスな響きなのかしら…」
「今年もってことは、五条先生常連?」
「そーよ。常連も常連、なんせ高専時代からの恒例イベントだからね。」
「じゃあ、俺たちの分も!」
「エンリョシナクテ、イイノヨ?ミンナノブンモ、タクサンツクッテキマシタ!」
「うわぁ…。」

ドサリと紙袋から出された可愛らしいラッピングに顔が引きつるのを止められない。彼女の満面の笑顔は、嫌でもあのクリスマスイブを思い出させるからだ。あの日の恐怖を誰も忘れられず、たまに夢に見て飛び起きたりすることを思い起こせば、当然のことと言えよう。

「ドーゾ!アイジョウ、タップリデース。」
「今年もありがとねー。」
「どうも…」
「あざっす…」
「ありがとう…」
「ドウイタシマシテ!ジャ、ショーコノトコロニイクカラ!」

マタネーと去っていく後ろ姿とずっしりと存在感を伝えてくる袋を交互に見た後、深い深いため息をついたのだった。

「ごふ、」
「な、何味よこれ!?」
「水、コーヒーっ…」
「チョコ味だからって、プロテイン入れればいいってもんじゃないよね…。」
「「「プロテイン…」」」

乾いた笑いを零す五条の一言に、1年生の心は一つになった。

『脳筋がっ!!??』



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