-3-

おっす!オラ、斑鳩偲喜!
聞いてくれよ豆太郎!最近やたらと呪術師が会いに来るなと思ってたらよ、まさかの拉致誘拐の為だったんだと!こっえー世になっちまったなぁ!!

「おぬしが全員返り討ちにしてたがな!?」

鬱々とした表情の豆粒、もとい豆太郎が奇声と共に頭突きをかましてきた。今日も斑鳩偲喜(幼女)はこてこてと頭を振っている。だが、傾げる度に揺れる髪は金ではなく黒。

「ちーっとばかり、めずらしいなりだったけどよう。」
「ええい!いつも通り話せ!内容が入ってこん!!」
「やれやれ、わかったよ。たしかに、ものめずらしいようしだとは、おもっていたけどさ。」
「攫われておれば、清々したものを。」
「あのふたりが、かなしむからね。まぁ、それいぜんに、じしするとはおもわないじゃないか。」
「少し考えれば分かることであろう馬鹿者。」
「じゅそがえし、みたいなもんかな?」

長い年月をかけて呪い反魂紛いのことをした人間を、呪殺しようとする。しかも『両面宿儺を殺す』という課せは果たされていない状態で。うん、どう考えても呪詛返しに近い構図だ。初めて術式攻撃を受けた時の、不発に終わる術式と目の前に崩れ落ちた呪術師に対する驚きを返して欲しい。それと名も知らぬ呪術師よ、弱すぎないって思って済まないな。

「うん。はやめにしることができて、よかった!」
「よかった!じゃない!縄張りを荒らされた我に謝罪しろ危険物!!」
「まぁまぁ、せいぎょすれば、きぜつするていどで、すむようになったんだからさ。」
「ぬけぬけとっ!」
「いやぁ、うしろぐらいやからは、いつのじだいも、あつかいがらくでいいよね。」
「減らず口ばかりぬかす!いっそのことその目玉、我と取り換えてやろうぞ!」
「はっはっは!」

喉から出るのは乾いた笑い。天与呪縛の男から理由を聞いて、まさか全くの非呪術師の子供に手を出すのかと呆れたのなんの。すぐさま悠君に母が呼んでいるからと嘘をつき帰宅。公園で見知らぬ子から変な色と笑われたと泣きつき、髪を黒染めして貰った。瞳はどうすることもできず、ある程度の年齢になったらカラーコンタクトとやらを買ってもらう予定だ。余談だが、趣味の悪い収集家とその一味は直々に会いに行って、今はきれいさっぱり、塀の中だよ。

『こんなに美しいのに、勿体ないわ。』
『そうだな、写真でも撮るか。』
『ええ!そうしましょう!』

自衛のためとはいえ容姿を変えるのには抵抗があった。■■であったことを、当の己でさえ忘れてしまうのではないかと。だが、夫妻の会話を聞き、2人に被害を及ぼしてはいけない。何よりこの人たちが覚えていてくれるのなら、それでよいではないかと思えたから心とは不思議だ。

「よそうがいだったのは、ゆうくんだね。」
「大泣きしておったからな。」

翌日、黒髪の私を視界に入れるや否や、大泣きし始めた彼には面食らった。なんで、なんでとしゃくり上げながら問い詰められ、詰まりながらも夫妻にしたように説明すると何故か睨まれた。曰く、しきちゃんは僕が守る!と。『いや、私が悠君を守るよ。』咄嗟に心の中に浮かんだ言葉は、案の定口に出してしまっていて喧嘩に発展したのはご愛嬌である。

「しっかし、せちがらい。」
「無様だな!だがな、この土地の者に被害が及ぶなぞありえてはならぬ!気張るがよい!!」
「はいはい。」
「返事は一度じゃ!」
「こじゅうとか。」

豆太郎をあしらっていると、ふと真面目な視線が返ってきた。

「で、おぬしの術式。あれはなんだ?」
「きいちゃうの?」
「神殺しはしないのであろう?」
「うーん、かんしょうしきだよ。」
「何の説明にもなっておらんではないか…。」
「もじどおり、『ものごとへかんしょうする』じゅつしき。あざみは、かくぜつとどくりつで、はんてんしたらけつごうになる。」
「呪術は基本何事かに干渉しておるであろう?」
「さいぶんかしたけっかね。わたしのは、げんりゅうにちかい。」
「源流か…。およそ人間が制御できる力とは思えんが?」
「そこはほら、いかりしょうねんとしょごうきとか、ゆうぎとせんねんぱずるみたいな、せんすのもんだいさ。」
「例えが適当過ぎて全くわからんわ!」
「はっはっは、いまもむかしも、いろいろあるのさ。」
「おぬし…。」
「なんにしろ、わたしは『にんげん』らしくあろうと、おもっているだけだよ。」
「気味が悪いことこの上ない。」
『ふふっ、すくなにもおなじことをいわれたな…。』

――貴様、何故本能のままに生きない?

昔はそれなりにあったことなんだけどなぁと過去を振り返る。それを誰がどう育てるか。どう生きていくか。ただそれだけの事。今はそれよりも…。

「いったい、どこのどいつだ?わたしをおなごにしたのは。」
「ふはははは!」
「わらいごとじゃないよ、まめたろう。」
「ぶははは!容姿は変えようと、おぬしの魂に蓄積された呪いと呪力はどうしようもない!呪術師共に知られれば、なぁ?」
「ねらってくるだろうね。」
「男子であれば手駒、だが女子は用途が増えるからな。さぞ優秀な胎と重宝されるのではないか?」
「やめてくれよ、わたしはおのこだ。」
「もはや過去の事であろう。」
「いやいやいや。これいじょうは、かんべんしておくれ。」
「無理じゃな。いずれ両面宿儺と対峙するのだぞ。」
「…よし、きめた。」
「む?」

宣誓!■■改め、斑鳩偲喜は、両面宿儺と対峙するまで無干渉を貫き通すことをここに誓います!!

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -