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『呪いの王』両面宿儺
鬼神と呼ばれる彼は、1,000年以上も前に実在した人間である。

当時の呪術師が束になっても敵わず、死後から現在に至るまで、死蝋と化した20本の指を破壊することすらできていない。

――では、彼は何故死んだのか?

病気?寿命?

いいや、違う。

あの日『とある呪術師と殺し合い、相打ちの末に死亡していた』のである。

だが、この事実は後世には伝わっていない。それどころかその呪術師の名や存在すら語り継がれてはいない。

何故なら――

「××、否、両面宿儺。これで終いだよ。」
「ケヒッ、それは貴様だ、■■。」

遠目からでもわかる禍々しい呪いの気配。前後に2つの面と四本の腕を持つ、『鬼』に相応しい容姿の両面宿儺と人でありながら相対し、尚且つ同等の呪力を放つ彼を周囲は同じ『人間』だと思う事ができなかったのだ。

故に、その呪術師を恐れ――

「やっと、やっと死んだ…。」
「そうだな、■■も―。」
「そ、その名を口に出すな!化けて出てきたらどうすんだ!」
「はっ、化け物同士が死んでくれたんだ。これで―。」
「ひぃぃぃ!?両面宿儺の指が燃えない!」
「何だと!?畜生!やっと殺せたのに!!」
「化け物同士で相打ちしてくれたというのに、これでは意味がないぞ!」
「そ、そんな、相手できる化け物ももういないのに…。」

――呪ってしまった。

1994年X月X日(快晴) 都内某所

寒さが和らぎ、桃の花が咲き誇る庭園の片隅。袖を着た人物が木に凭れ掛かり転寝をしていた。

『クッ、■■。貴様、呪われるぞ。』
『んん゛、精々抵抗するさ。』
『ケっ、ヒヒ、俺はいつか、復活する。』
『止めて、欲しいんだが。』
『ヒヒヒ、その時また死合おうではないか。』
『いやいや、縁起でもない事をさ、言わないで、おくれよ。』

ザァァァア―――

木々を抜ける風の音に引き戻されたそれは随分と懐かしい思い出だった。その人物は徐に背を預けた木を見上げ、その木漏れ日に眩しそうに顔を顰める。

「全く、そんな縁担ぎ冗談じゃないよなぁ。」

深いため息と共に零された独り言は静かにその場に響いた。

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