ヒロッターで婿を募集した件について@mirage_xxxx



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@HAWKS
潜り込んだ布団の中で、未だ鳴りやまないスマホ。渋々もう一度ヒロッターを見ると、先ほどよりもリツイートの数が増えていて、更に頭が痛くなる。

「うわぁ、コメントもいっぱい来てる…。」

酔っぱらった勢いで投下した爆弾には、思いの外いろんな人から反応が返ってきていた。スライドしてそれらを流し読みしていると、とあるヒーローの名前を見つけて指が止まる。

HAWKS@HAWKS

個性の影響で申し訳ないことをした後輩。以前チームアップの要請があり、そこで初めて会った時の彼の第一印象がそれだ。と言うか、あの時は全面的に悪いことをした。

『初めましてミラージュさん。俺、貴女のファンなんです。握手して貰ってもいいですか?』

『ハァ!?お前の方が私より人気あんダロ!!フザケンナ!!(私のファン!?うそでしょ!!?)』

『へ?』

『あー、ごめんな。コイツ今、個性の影響でポンコツだから。握手は…別の機会でもいいか?』

『ハン!!誰がテメェみたいな奴の手なんざ握るかヨ!!ッイテエ!?(個性のばか!ファンって言ってくれてるのに!て、痛い!?)』

『お前は黙ってろミラージュ!!いや、ほんとごめんね!事務所に詫び送るから!!』

『あ、ちょっ…』

折角ファンだと言ってくれたのにも関わらず、その時映し取った敵の性格のせいで印象最悪だったんだろうなと記憶から消し去っていた。そんな彼からのコメント。正直見たくないような、見たいような。非表示の彼のコメントをタップするか迷っていると、コンコンと何かをノックする音が聞こえてきた。

「へ?なに?」

続くノック音に驚いて布団から飛び出すと、窓に大きな影が映り込んでいた。その影が単なる人型ではなく大きな翼のようなものが左右に広がっていて、まさかとカーテンを引っ張る。いつもは顔の半分を覆い隠すサングラスを、指で上げたホークス君がベランダに居た。慌てて窓を開けるとニッコリと笑った彼が靴を脱いで、室内へ上がり込んでくる。

「おはようございますミラージュさん。」

「は?え、なんでい!?ぃたぁ…。」

「ははっ、飲み過ぎっすよ。」

「うぅ…、何でここに?」

「見聞が広いんです。後、こう見えて俺、ミラージュファンのガチ勢なんで。」

「…ストーカー?」

「いやいや!ヒーローです!同僚です!」

「いや、でも…。」

「そんなことより!お迎えに来ました!!」

「迎え…?」

「はい。俺と一緒に九州に来てもらえませんか?」

「は?」

いつの間にか私の両手を握っていたホークス君。何を言われているのか全く理解できていない私はただ口を開閉させるだけ。可愛らしく首を傾げていた彼が、プッと噴き出した。

「ミラージュさん、金魚みたいですよ?」

「ちょ、ちょっと待とうか。寝起きだからかな、理解が…。」

「そのままの意味です。」

「急にどうしたの?チームアップ?」

「ワオ!これが素!!」

「えっと…。」

「昨晩のヒロッター見たんで、プロポーズしに来ました。」

「へっ??」

プロポーズとホークス君が発したのと同時に、私の手を握る彼の手に力が入った。しっとりと汗を感じて、今のが幻聴ではないのだと悟る。

「いや、君若いし…。」

「年齢は書いてありませんでした。」

「トップランカーと中堅じゃ…釣り合わないよ?」

「言いたい奴には、言わせておけばいいんです。」

「ほら、第一印象最悪じゃ…。」

「面白い個性ですよね。俺『今日ミラ』毎日録画してます。」

「ほら、趣味の延長線なんだと、」

「違います。ファンですけど、それ以上に…俺は、ミラージュさんを愛してます。」

サングラスを外したホークス君がこちらを見つめてくる。カラーレンズ越しではない、初めて見るその眼差しに背筋がゾクリと総毛立つ。猛禽類に睨まれた獲物は、彼に睨まれた敵は皆、こういう気持ちになるのだろうか?

「ッ!」

「怖がらないで。」

「ホークス君?」

「楽しいものなんて何にもなかった。そんな時に、ネット掲示板で『真似っこヒーロー』のスレを見つけたんですよ。馬鹿みたいに笑いました。今じゃ毎日『今日ミラ』観て、SNS漁りまくって、すっかり貴女のガチファンです。」

「…。」

「貴女に救われたんです。」

「ホークス君。」

「初対面の時はあんな感じでしたが、それでもいつも画面越しに見ていた貴女と話せて俺は嬉しかった。そんな貴女が婿募集なんて呟くもんだから。これは行くしかないと思って、夜通し飛んできました。」

「え、寝てないの!?」

「大丈夫ですよ、頑丈なんで。」

「いや…。」

「そんなことより…。一緒に九州に来て欲しい。俺と結婚してくださいミラージュ。」

「えっと…。」

――まずは名前を教えてもらってもいいですか?――

僅かな沈黙の後、大笑いしだしたホークス君。つられて私も笑えば、握られていた両手を引かれて彼の腕の中に抱きしめられた。鏡子さんと呼ばれて何故知っているのかと聞けば、愛する人の名前だから当然だと言われた。どうやら彼は私の名前を呼ばなかっただけで、ずっと前から知っていたらしい。



HAWKS@HAWKS
返信先@mirage
迎えに行きます。




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