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ヒロッターで婿を募集した件について
@mirage_xxxx
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@allmight
「あ、起きたかい?」
「へ?」
潜り込んだ布団の中で昨日の自分を呪っていると、ガチャリと寝室のドアが開く音がした。私は寂しい独り暮らし。何事かと飛び起きて絶句。あり得ない人が我が家にいた。
「お、おーるまいと…?」
「ああ!私だ!!」
「何故!?イッ、え、痛い?夢じゃないの!?」
「起き抜けに元気だね!はいお水。」
「ありがとうございます。って!何で居るんですか!?ここ私の家ですよね!!」
「正真正銘君の家さ!何故そこに私がいるかって?」
「勿体つけないで教えて下さい!!はっ!?私もしかして、ご迷惑をおかけしたんじゃ…。」
流れで渡されるミネラルウォーターをすんなり受け取ってしまったが、これでもあり得ない人物の登場に心底驚いているのだ。あのNo.1ヒーローこと、平和の象徴である『オールマイト』が何故ここに。昨晩を思い出そうとしても、ヒロッターに呟いたことも何も思い出せずただ項垂れる。そんな私を見かねたのか、オールマイトさんがベッドサイドに腰かけて頭を撫でてくれた。
『ふわ、あのオールマイトさんにヨシヨシされてる…。しかも私服だし。夢?幻??』
「昨晩君達が女子会を終えて店から出てくるところに、丁度居合わせてね。皆結構酔っぱらっていて、特に君が酷くてさ。自分達じゃ手に負えないからって、ミッドナイト君に頼まれたんだよ。」
「睡さん何てことを…。あの、すみませんでした。良い大人なのに泥酔した挙げ句、送っていただくなんて…。なんと謝罪をすればいいのか…。」
「謝罪!?いったいナゼ!!?」
「日々ヒーロー活動でお忙しいだろうオールマイトさんに、若輩者の私がとんだ苦労をお掛けしてしまいました。本当に謝罪ですまされる様なことでは…ハッ!?こんな時間までいらっしゃると言うことは、私何か仕出かしてますよね?!」
「ちょ、ミラージュ君、落ち着こうっ。」
「これが落ち着けますか!?粗相してお召し物を汚したりしてませんか?暴言とか暴力とか…、あわわわ、何したんだ私!思い出せぇええ!!」
「ほ、ほんと何も無いから!落ち着いて鏡子君!!」
「へ、私の名前?」
「ミッドナイト君に聞いたんだ。ほら、取り敢えずお水でも飲んで落ち着いてくれ。」
「す、すみません。」
大袈裟なジェスチャーと慌てる様子のオールマイトさんに、やってしまったと反省しながら今度こそ水を飲む。少し落ち着きを取り戻したのか長い息を吐くと、彼がナチュラルに私が持っていたペットボトルを奪いベッドサイドに置いてくれる。さも当然に行われた一連の動作に、流石No.1ヒーロー等と感心した。
「落ち着いたかい?」
「はい。取り乱してすみませんでした。」
「構わないさ。さて、謝罪ばかりしている鏡子君にまずは良い知らせだ。昨晩君はさっき言っていたような粗相は何もしていないよ。」
「はぁ、良かった、です。」
「ははっ!心底安心してるようだね。」
「当然ですよ。平和の象徴相手に粗相するなんて処刑ものです。いえ、自ら死を選ぶレベルです。」
「私はそんな大した男じゃないさ。」
『真似っこヒーロー』なんてキワモノやってるが、こんな私でもオールマイトさんは憧れだ。三十路近くなっても、憧れの人が近くに居ることに緊張して手元ばかり見てしまう。酔っぱらって送って貰ったのに何を今更と呆れるかもしれないが、女とはそう言うものだ。ふとオールマイトさんの自嘲気味な笑い声が聞こえて、何事かとそちらに顔を向ける。申し訳なさそうに眉を寄せた彼と目があった。
「お、オールマイトさん?」
「鏡子君、私は君が思ってるような聖人君子ではない。」
「えっと?オールマイトさんは、平和の象徴でNo.1ヒーロー。誰が見ても聖人君子ですよ?」
「じゃあ悪い知らせだ…。私が君の婿に名乗りを挙げるため、昨晩パトロールと称して君を探してたと言っても?」
「は?え?婿?」
「君のヒロッターを見ていても経ってもいられなくなってね。私は所詮そんな俗物さ。」
「え、ちょ、何故オールマイトさんが?」
また混乱し出す頭。何故?どうして?そればかりに埋め尽くされていく。だって、私はプライベートは兎も角、仕事ですらこの人と絡みがないから。
「君からしたら話したこともない相手から、こんなことを言われるのは嫌だろうが…。」
「え、あ、嫌とかではなくてですね!!驚きすぎてですね。オールマイトさんの仰る通り、今日初めてお話するわけですし…。」
「うん。そこなんだけどね。実は今日が初めてじゃないんだよ。」
「え?いや、今日が初めてですよ?私は個性を発動して相手の性格を映している時でも、意識は残っています。なので、非常に恥ずかしいのですが、その時仕出かしたことも、会った方も覚えているんです。」
「ほう!あの個性はそういう感じなんだね!初耳だ!」
「…個性使用中ではないんですか?」
「うん。違う。会って話した時、鏡子君はまだ個性を発動していなかったよ。」
「ますます不可解です。流石に通常時でオールマイトさんにお会いして、それを忘れるほどボケてはいません。」
「うーん。それがね、分からなくて当然なんだ…。」
「当然って、どうしてですか?」
「mmm、君に情けない姿を晒すのは嫌なんだが、隠し事をする方がもっとよくないだろう…。」
重々しく言葉を吐いたオールマイトさんから煙が出て来はじめた。いきなりの事に言葉を失っていると、その煙は彼を覆い尽くす。
「お、オールマイトさん?」
「…やぁ。」
「なっ!?」
煙が晴れたベッドサイドに腰掛けていたのは、骨と皮だけとも言えるガリガリの男性。驚く私に片手をあげた彼は、数日前に敵から守った市民だった。
「実は公表されていないんだが、五年前に大きな事件で負傷してね。肺と胃が無いんだ。」
「そんな…。」
「皆が知っている、マッスルフォームになれる時間はごく僅か。この前はその制限時間を越えてしまっていて、そんな時にミラージュ、君に救けてもらったんだ。」
「…。」
「鏡子君?やっぱりこんな頼りない男じゃ、君には、」
「この五年!そんな体でっ、市民を守ってくれてたんですか…!?」
「…。」
「私は『真似っこヒーロー』なんてキワモノですけど!平和の象徴には遥か及ばないけれど!貴方にばかり背負わせてしまって、悔しいですっ…!!」
「鏡子君はやっぱり優しいな。先日救けてくれたときも、そうだった。とてもガタイの良い敵だったのに、真っ先に突っ込んでいってさ。びっくりしたんだぜ?」
「そんな、私はただ…、目の前にいる人を救けただけです。」
「うん。分かってる。あの日から、君の事が気になって調べたら、情報が出てくる出てくる。」
「えと、『今日のミラージュ』?」
「そう!それとか、君のスレッドやファンクラブのページとか。」
『え!?ファンクラブ!!??』
「たくさん記事を見て、君が私の時の様に割りと無鉄砲なヒーローだって知ってね。」
「NO.1に無鉄砲と言われるとは…。」
「良い意味さ。お陰で目が離せなくなってしまった。」
「…!」
頭を撫でていた骨ばった手が、ゆっくりと顔に降りてくる。たどり着いて撫でられた頬が熱を持っていく。酷い顔をしていると顔を背けたくても、真っ直ぐにこちらを見つめてくる青い瞳。その眼力が強すぎて、目を逸らすことさえ叶わない。
「こんな体で…。先もきっと長くない。」
「っ!」
「それでも、君と一緒に居たいと思った。」
「おーる、まいとさん…。」
「こんな愚かな男だが…。」
――君の傍に、居させてくれないだろうか?――
素性を一切明かさない、孤高のNO.1ヒーロー。そんな彼が、懇願とも取ることの出来る声色で私に愛を囁いた。揺れる瞳がどうしようもなく綺麗で、まるで溺れているかのように息が苦しい。気が付いたときには、オールマイトさんの唇が私のものと重なっていた。
Allmight@allmightがいいね!しました。
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