ヒロッターで婿を募集した件について@mirage_xxxx



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@Presentmic
潜り込んだ布団の中で、未だ鳴りやまないスマホ。渋々もう一度ヒロッターを見ると、先ほどよりもリツイートの数が増えていて、更に頭が痛くなる。

「うわぁ、コメントもいっぱい来てる…。」

酔っぱらった勢いで投下した爆弾には、思いの外いろんな人から反応が返ってきていた。スライドしてそれらを流し読みしていると、とあるヒーローの名前を見つけて指が止まる。

Present・Mic @Presentmic

かの有名なスーパーDJ様。そんな皆のアイドルは、実はわりと平凡な名前で、学生時代に私の個性訓練に付き合ってくださった素晴らしい先輩だったりする。今やもう一人の先輩とは違う意味で、雲の上の存在だ。

「そう言えば、先週の番組でスキャンダル発言したんだっけ…。」

彼のラジオ番組内1の名物コーナー『教えて!マイク!!』で、とあるリスナーの恋愛相談に乗っていた時に、ついうっかりなのか自分も片思い中だと暴露していたらしい。その後不自然に公共CMが入り、翌日のワイドショーは相手が誰なのかで持ちきりだった程。

最もお似合いのカップル候補は、同じ雄英で働く睡さんや、メディアにも引っ張りだこのウワバミちゃん。逆に、ワーストカップルが私だ。世間の皆さまからは『煩そう』、『騒音カップル』との評価を貰ったが、それには訳がある。彼のラジオ始まって以来の暴挙、番組乗っ取り事件だ。

『まままっマイク先輩!私、ラジオなんて無理です!死ねます!!』

『ナーニ言ってんの!?今日のスペシャルゲストに呼んでやったんだ!アゲテこーぜ!!』

『イヤイヤイヤ、先輩特権振りかざして連行したじゃないですか!?こちらに拒否権有りませんでしたよね!!?』

『ハッハッハッハ!!』

『笑って誤魔化さないで下さいよぉ〜。お家に帰して〜!』

『本番5秒前でーす!』

『ムリー!』

『大丈夫だミラージュ!俺を映せ!そしたら、テンション爆アゲでお前も、俺も、リスナーも皆ハッピーだ!!』

『そ、その手が!?行きますよおお!!』

『3,2,1!』

『『イェェエエエ!!!!』』

『ガガッビッ、ピー…、暫くお待ち下さい。♪〜』

『…オウフ、のっけから悪いなリスナー達!きょ』

『今日のぷちゃへんざレディオはアタシ、ミッラージュがジャックしてお届けするぞぉぉおおお!!』

『オイコラ!!勝手に俺の番組乗っ取んな!?』

『何スーン!!後輩に暴力はいけないんだぞ!マイクパイセン!!』

『何キャラ〜!ちょ、俺そんな性格してないからな!』

『ぷぷ、パイセン、nikkoさんの物真似似てなさすぎ〜。どんだけ〜。さあ、のっけから大声出して物壊しちゃったけど!!リスナー達!今日はテンションぶちアゲていくぜ!イエーァ!着いて来いやァァアアア!!!!』

『ミラージュさん?オーイ。』

『さぁ、今日最初はあ?コチラ!!聞いてよ!ミッラージュ!!』

『オオオオイ!!聞いてよっ!ミラージュさぁあん!!?』

とまぁそんな感じで終始MC権を奪い取ったこの回は、彼の黒歴史の1つとして語り継がれている。その後、2人揃うと公害的な扱いを受けてっ、てまぁ私のせいなんだけれど。

「番組の後もとに戻った瞬間、土下座したっけ…。高かったな…壊した機材。」

散々だったあの日を思い出して意識を飛ばしていると、手に持っていたスマホが今までより長く震えだした。慌てて液晶を見れば着信画面が出ていて、そこには公害コンビの先輩の名前が表示されているではないか。恐らくラジオでネタにするためだろう。しかし、取らなければ後でお説教される。2つを天秤にかけ、結局通話へと指を動かしていた。

「はい…。」

「お、起きてたか?」

「スマホが煩くて…。」

「ハァン?そりゃお前、アンだけおおっぴらにすればフツー鳴り止まねぇだろ。」

「そんなこと言われても…。ネタになりそうなこと、何にもないですよ?」

「ワァッツ?」

「え、ラジオのネタにするために、電話してきたんじゃないんですか?」

「いやいや、お前の中で俺はどういう奴になってんだ?」

「公害コンビ?先輩の黒歴史??」

「ホーリーシット!!そりゃ世間のだろ?」

「せ、先輩、声抑えてくださっ!!頭いたい…。」

「ハー、やっぱ飲み過ぎか。どーせ、女子会やって酒の勢いで呟いたんじゃねえの?」

「うぅっ、返す言葉もありません…。」

「ったく、お前はいつまで経っても、手の掛かるクレイジーガールだな。目ぇ離すとすーぐどっか行って、挙げ句爆弾投下しやがる。ミラージュ、お前、今度俺の番組出ろよ。」

「脈絡無さすぎじゃないですか?ディスりからの、ネタ強要ですか?と言うより私、マイク先輩の番組出禁になりましたよね??」

「機材頑丈な奴に替えりゃイケるって。んで、交際宣言しようぜ!」

「は?先輩…頭大丈夫ですか?」

「こいつぁあ!シヴィィイ!!気付けよ!!いい加減気付いてよ!?鏡子ちゃん!!??」

「へ?」

マイク先輩のラジオ番組で交際宣言?誰と誰が?お酒の抜けきれない頭は混乱しすぎて、耳に当てているスマホの声は遠い。私が聞いていないのに気が付いたのか、ヴォイスを使わなくても十分大きな声がスマホから飛んできた。

「鏡子ちゃん?鏡子聞いてる?ついでに聞くけど、こないだの『ぷちゃへんざレディオ』聴いてたか?」

「…いえ。あ、電話は聞こえてます。」

「やっぱりな!お前、俺あの時ちゃんと言ったんだぞ!報道されてないけど、片思いの相手は『耳潰しあった仲』だって!」

「うわぁ…。マイク先輩、マゾだったんですか?」

「何でそうなぁぁある!!??お前だよ!オ・マ・エ!!」

「えっ、私!?確かに訓練で鼓膜破りあいましたけど…、あれは訓練で惚れた晴れたとかは無かった筈。他の方と間違えてませんか?」

「バッカヤロー!あんな体張ったクレイジーな訓練ホイホイするか!!鏡子とだけだっーの。学生時代からイタイケナ俺の恋心弄びやがって!」

「マイク先輩…そんな頃から、私のこと好きだったんですか?」

「わりーかよ。はぁ、毎度痛いの我慢して耳潰し合ってんのにさぁ、誰かさんは気が付かない所か普通科の奴と付き合い出すわ。卒業して先輩命令で呼び出す様にしたのに、一般人と付き合うわ…。俺一途なのに不憫すぎじゃね?」

「な、なんかすみません…。」

「すまないと思うなら、責任とって?」

「はい?」

「イエッス!言質取ったぞ!!よし、マスコミにリークしてくるから。いや、ヒロッターで俺が呟くか…。」

「いやいやいや、今の疑問系ですから!待ってくださいっ!!」

「ヤーダネ。苦節うん年の三十路男から逃げられると思うな!」


――諦めて俺のもんになれよ。――


「っっ!!」

耳元で天下のヴォイスヒーロー様の低音が炸裂した。沸騰するかのごとく血が上る頭はくらくらし出す。もしかしたら夢落ちかもしれないなんて失礼なこと考えながら、私の意識は遠退いていった。

マイク先輩が本当に交際宣言をして、あれは夢じゃなかったのかと項垂れる私の姿が『今日のミラージュ』で放送されるのは数日先のこと。


Present Mic@Presentmic
返信先:mirage
明日の一面は俺らで決まりだな!!



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