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ヒロッターで婿を募集した件について
@mirage_xxxx
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【急募】誰か私の婿になってください。
「いよっしゃァァァアア!!終わったァァアア!!!!(やったー!終わったー!!)」
いつも通りのハードなヒーロー業を終え、今日は待ちに待った女子会の日!この日のために1ヶ月頑張ったと言っても過言ではない程待ち焦がれていたのと、さっきまで退治していた敵のテンションに充てられて、おおよそ女とは言えない絶叫をあげる私。
「み、ミラージュ…。大丈夫か?変なのまで映したか??」
「フハハハハ!!貴様、この私が可笑しいと言うのか!?(え?私また変な性格になってますか!?)」
「貴様って!?お前、マジで影響受け過ぎだから!!?」
「笑止千万!!いや、こんな所で油を売っている場合ではない!今日は会合の日!(やっちゃった!!え、ちょこのままだと女子会もこのテンションで行く羽目に!!)」
「オイイイィィィィィ!!落ち着けよ!!そのままじゃお前が逮捕されるわ!!!!!」
「いざ行かん!!フハハハハハハ!!!!(いやだ〜!!誰か止めて〜!!!!)」
心配の声を掛けてきてくれる相方の先輩をスルーし、先程対峙した敵の個性「マントっぽいもので飛行する」でその場を飛び去った。
――真似っこヒーロー、ミラージュ―――
それが私、水面鏡子のヒーロー名。個性『映し鏡』で相手の個性を使用することができるのだ。コピーと違うのは、発動条件の『相手を視界に入れた』上で『どれだけ正面から向き合えたか』で使用できる個性の正確性や強度に差が出てくる。それから、『映し鏡』と言うだけあって左右、だけでなく上下も逆になってしまう。例えるなら、右利きの相手を映し取れば、私は左利きになる感じかな。因みに言うと、映し取った個性は反転しないし、異形系の個性を映し取ることはできない。そして一番のネックがコレ。
「フハハ!良い風だ!!!!(うぅ…またネットで晒されるんだ…。)」
相手の個性だけでなく『性格』まで映し取ってしまうのだ。先ほど戦った敵は、マントに絡む個性だっただけに紳士風のキザな男だった。おかげで私は今、紳士風な振る舞いで空を飛んでいる。遠くに見える報道ヘリに投げキスを送ろうとする腕を必死に止めようとするが、個性が発動している間、私個人の意識は二の次。最終的な目的は果たすが、そこまでは相手の性格次第で右往左往する。メディアや市民は、毎回変わる私のキャラクターが面白いのか、『今日のミラージュ』なんてコーナーを立ち上げてくれる始末。きっとこの姿も、数時間後にはいろんな媒体に記録されるのだ。
「ラッシャイ!!お連れ様到着です!」
馴染みの居酒屋の暖簾をくぐれば、いい笑顔のお兄さんが出迎えてくれた。私はキザったらしく、悪いね、なんて言って彼に先導され最奥の個室に案内される。通された部屋には既に仲のいい女性ヒーローの2人が揃っていた。
「お嬢さん方、遅れて…。すみません!!遅くなりました!!」
「ブハッ!!??」
「ふふ、もう、戻っちゃうの?」
「あわわわ、忘れてくださいよぉ〜。なりたくて、なってるんじゃないですから…。」
笑いながらごめんと言ってくださる『ミッドナイト』こと睡先輩と、未だに爆笑している『Mt.レディ』の優ちゃん。この2人は表では仲が悪いように(実際相容れないんだろうけど)見せているが、数少ない女性ヒーローなのでこういった会の時は普通に集まってくれる大好きな人たちだ。そんな2人に手招きされながら、意思の自由を取り戻した私もテーブルに着く。定刻より少し遅れてしまったからか、既にテーブルにはお酒やおつまみが所狭しと並んでいた。追加オーダーしたお酒で乾杯をすれば、さっそく優ちゃんが小突いてくる。
「鏡子先輩、今日もぶっ飛んでましたね!」
「え!?何で知ってるの!!?」
「残念ながら、もうSNSに上がってるわよ。ほら。」
「なっ!チョイ悪ミラージュ…。」
睡先輩が見せてくれたスマホの画面には、一般人の掲示板が映し出されていた。そこには夜空を優雅に飛ぶ私の姿。投げキスしている時のもある。
「まぁ鏡子先輩、いつものことですから。そんなに落ち込まないでいいんじゃないですか?」
「いや、いつものことって言ってもね…。」
「優ちゃんの言う通りよ。貴女も私みたいに曝け出せばいいじゃない!!」
「いや、この人既に曝け出してますから!」
「わぁぁあん!!2人とも私の素が地味だからって!!」
「あ、センパっ!」
「まぁまぁ。良い飲みっぷりね鏡子ちゃん!!ジャンジャン行きましょう!!」
持っていたジョッキを一気に飲み干す。普段もっとゆっくり飲むのに、睡先輩や止めれずに混ざってきた優ちゃんに煽られ、気が付けば私達の個室は酔っぱらいの巣窟と化していた。もう正常な意識などとうに飛ばした私達の会話が行き着く先と言えば『恋愛』だ。今日も空き瓶を転がしながら、誰と言わず話し出す。
「ううっ、アラサーまでには結婚したい…。」
「ちょっと、喧嘩売ってんの?こちとら、いい出会いなんて全然ないわよ。誰か紹介しなさいよ。」
「え〜、睡さんなら選びたい放題じゃないですか〜。あのお付きの子たちとか、イケメンじゃないですか〜。」
「そうですよ!イケメン侍らせといて、嫌みですか!?」
「ハァ!?ちょっと勘違いしないで頂戴。あの子たちはそういう対象じゃないの。もっと、こう、男気ムンムンなイケメンがいいのよ!!」
「フォースカインドさんとか!」
「んん〜っ!!オシイ!」
「でもぉあの人、妻子いそうじゃないですか?」
「妻子いそう!?」
「禁断の香がするわぁ…。でも、ないわね。貴女こそシンリンカムイとどうなのよ?」
「ぶっちゃけ…」
「ぶっちゃけ…」
「ないんですよぉぉぉお。」
「紛らわしいわね!!は〜、どっかにイイ男いないかしら?鏡子ちゃんは?」
「って、先輩泣いた!?このパターンは…。」
「うわぁああああ!!また振られたんです〜!!!!」
「あ〜ん、よしよし。また例の?」
「あ゛ぃ…、オウム返しっしたり、喋り方真似しちゃったりするの気持ち悪いって…。」
「うわ、またですか!鏡子先輩男見る目ないんですから、ホイホイ付き合うのどうかと思いますよ!!」
「だってぇ〜、アラサーまでに結婚したいんだもん〜。」
「貴女も喧嘩売ってくるスタイル!んも〜、私だって結婚したいわよ!!」
「睡先輩はともかく、鏡子先輩はもうすぐ30歳ですからね…。」
「アタシは兎も角ってどういう事よ!?」
「真似するところも可愛いって言ってくれてたのにぃぃいい。結局次元が違う、キモイって!!最後のチャンスだって頑張ったのにいいいいいい!!!」
「鏡子ちゃん…。」
「鏡子先輩。もうこの際、同業者狙いましょうよ!」
「ひっく、同業者?」
「そうね!鏡子ちゃん今まで、プロヒーローはNGだったでしょ?そこ取っ払っちゃいましょう!!」
「で、でもぉお。」
「でもじゃないわ!」
「ヒッ!」
「先輩、結婚したいんですよね!?」
「は、ハイ!!したいです!!!!」
「いい返事ね!そうなれば善は急げよ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヴゥゥゥゥ---
「ん、あさ?」
アラームとは違うバイブ音で目が覚めた。見慣れた天井に、昨晩店を出た記憶はないが家には帰れたのかとふわふわした頭で自己完結する。手探りで枕元から手繰り寄せたスマホは何かの通知かランプがついており、ひっきりなしに震えている。不思議に思い、画面の電源を入れると、今まで見たことない数のヒロッターの通知が表示された。
「は?」
ヒーロー御用達のSNS『ヒロッター』。No.1ヒーロー『オールマイト』はじめ、多くのヒーローが自分の活動や宣伝をしているSNSアプリだ。ほとんど登録しているだけのそれをタップすると、リツイート最高数を獲得しましたというポップが出てきた。酔った勢いで昨日の写真でも上げてしまったのだろうかと、自分の呟き一覧を確認してフリーズ。
【急募】誰か私の婿になってください。
プロフィール画面にアイコン確認等、何度見直しても、私のアカウントがその呟きをしていた。そしてそのリツイート数はまだ明け方だというのに増え続けている。
「え、なにこれ?」
本文には箇条書きで条件がいくつか挙げられていた。高らかに結婚したい宣言をしたこの辺りから私の記憶はほとんどないが、うっすらと個人名を出してどうのこうの言っていた後、こういう人がいい等と理想を各々出していたのだけは覚えている。しかし、うろ覚えのそれらが確かに文字としてSNSに載っていた。
「やだぁ、出社できないよ〜。」
二日酔いか、それとも混乱するこの状況のせいか、ズキズキと痛み出した頭を抱え布団を深くかぶりなおした。
【急募】誰か私の婿になってください。
・ヒーロー
・身長160cm以上
・動物が好き
・面白い
・優しい
・真似っこしても許してくれる
・個性を理解してくれる
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