ヒロッターで婿を募集した件について@mirage_xxxx



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【公式】今日のミラージュ
何がどうしてこうなった?

頭の中は何故、どうして、と疑問ばかり。しかし、私がそう考えている間にも、視界を塞ぐ少年の顔はどんどん近づいてくる。

ゴン!――

咄嗟に頭突きをかました私は悪くない筈…です。


ことの発端は昨日ーー
緊急無線で呼び出された先、ヒーロー御用達の病院の一室の前。そこには馴染みの警察官と数名のヒーローが渋い顔をして集まっていて、駆けつけた私をこれまた複雑な表情で迎えた。

「イレイザーヘッドが敵の個性を受けてしまって…、その若返ってしまったんだ。」
「若っ、過去に戻る個性か何かですか…?」
「恐らくそう言うものでしょう。話を聞く限り高校1年生位じゃないかと。」
「そんな…。」

敵の個性を受けたと言うことも衝撃的だけど、それ以上にこの扉の先にいる消太先輩は私を知らない人だと言うことに血の気が引く。続けざまに警官が、近親者や親しい友人だと本人の混乱を招くし、プレゼント・マイクから君がいいと推薦されたからなどと説明をされたが、胸中はそれどころではなかった。

「初めまして。ヒーローのミラージュです。」
「初めまして…相澤消太です。」

記憶の中の先輩よりも少しばかり暗い少年がベットにかけていた。

『ほんとに記憶ないんだ…。』

ここで、初めまして?お前頭打ったのか?とか返事が来てほしかった。ズキリと胸が痛むのを圧し殺して、警官が彼に護衛だと説明するのをただただ眺める。ふいにじっと観察するように見られるので、笑顔を返す。これでも表情には定評があるから、きっと分からない筈。

「あの、」
「はっ、大丈夫です!突然の事で驚いているかもしれませんが、相澤さんのことは私が守ります!」
「…こんな使えない奴守るとか暇なんですね。」
「え?」
「暇なヒーローくらいですよね、こんな護衛引き受けるの。こんな個性…守る価値とかなくないですか?」
「それは違う。」
「?」
「それは違うよ先輩。先輩の個性は凄い。身をもって体験した私が言うんだから間違いない。んーん、そんなことなくても、先輩を守るのは大事なことで、必要なことだから。」
「…。」
「だから、そんな風に先輩が言わないで。」
「ミラージュ、そこまでだよ。」
「あ、すみません。えーと、という訳なので、今日から暫くよろしくお願いします。」
「よろしく、お願いします。」

微妙な雰囲気が漂う中、私達は警備の強化されたホテルへと移動したのだった。

「すご…。」
「セキュリティー重視なので、ちょっと生活感が無いのが難点ですが。何か必要なものがあればフロントにお願いできますし、近くにコンビニ、スーパーもあるので一緒に行くのも、あ、それは駄目でしたね。事務所の先輩パシるので、何でも言ってください!」
「はぁ、お世話になります。あの、」
「なんでしょう?」
「俺が貴女の先輩なんですか?」
「え?」
「さっき、先輩って。」
「えと、すみません、失言でしたね。」
「いえ、あの、自分はちゃんと、先輩ですか?」

質問の意味が一瞬分からなくて、相澤さんをガン見してしまう。バツが悪そうな彼はすぐに俯いてしまって。ただ、その様子にふと思い当たる節があって。やっぱり消太先輩なんだなと思いながら、昔一度だけ伝えた回答を返してみた。

「詳しくは言えませんが、私は相澤先輩に沢山の事を教えてもらいました。多分、出会ってなかったらヒーローになれていなかったと思います。」
「っ。」
「心ない人達は何処にでもいます。その人たちの声が大きく聞こえることだって沢山あります。私だってキワモノ〜とかしょっちゅう言われて、後ろ指刺されて笑われてますし。でも、気にしてもしょうがないんですよ。キリがないし、それで自分を制限してたら、勝てる敵にも勝てなくなりますから。まぁ、これも受け売りですけどね。」
「…メンタル強いですね。」
「ハハハ、伊達に片や不審者、片やミニ枠やってませんからね…。」
「不審者?ミニ枠?」
「アハハ、嫌でもメンタル強者になるってことです!さて、ここでの生活ですが――。」

多くは言えない。それでも少年の相澤さんには伝わったようで、それまでの暗い雰囲気が薄くなった。良かったとホッとしながら、心苦しい生活様式について説明をしていく。ほぼ家と言って遜色ないホテルの間取り、注意事項などなど。一番心苦しいのはTV、ラジオ、新聞、おおよそのメディアへの接触禁止だろう。未来への抵触がどれほどの影響を彼に与えるか分からない以上、情報への接触は控えるべきだと判断されたのだ。というより、どのメディアもプレゼント・マイクの露出があるから、そもそも駄目なんだけれども。

『好奇心旺盛な男子高校生に、なんて辛い仕打ちなんだろう。』

警察から渡されたものは古いコミックスとゲーム、それから高校1年生用の参考書。私なら目も当てられないほど打ちひしがれる状況だが、先輩はそうでもないらしくそれらに目を通している。問えば、数日の我慢でしょう?と返ってきて、早急に事務所の先輩に何か面白い物を持って来てもらおうと思った。

・・・・・

『変な奴。』

ミラージュと紹介されたヒーローを相澤は不思議に思っていた。目が覚めたら見知らぬベッドの上に居て、医者の診察の後警察から実は未来で個性で若返ってしまったなんて説明を受けて。何言ってんだこいつらと思っているところにやってきた女ヒーロー。パッチリした瞳が零れ落ちそうな程見開かれた後、思い出したように初めましてと言われて、相澤は何だか落ち着かない気持ちになった。

『多分、俺の事知っている人なんだろうな。』

自分がヒーローかどうか、そうだとしてどれくらいの知名度なのか知らないが、先ほどの態度は知り合いがやるものだと冷静な部分で推測する。そして、こんな不出来な奴の護衛なんてやりたくないだろうな。呆れているんだろうな。お得意のマイナス思考に拍車がかかって、つい『暇なんですね。』なんて憎まれ口をたたいてしまった。

『あんな風に思ってくれる人がいるのか。』

まさか、大真面目に『私の先輩を馬鹿にするな。』的なことを言われるなんて思ってもみなかっただけに、受けた衝撃は大きくて。山田にだって、また暗いこと言って〜とからかわれるくらいで。他の奴にはヒーローらしからぬ根暗だと思われている、こんな卑屈な奴相手に、その一言はもしかするとオールマイトの必殺技級の衝撃だったかもしれない。だから、変な質問までしてしまって。未来との接触を禁じられているこの状況で、答えてくれるわけなんてないのに。だというのに、己が居なければヒーローにはなれていなかった、なんて言われてしまって。言い知れない感情が胸のあたりでとぐろを巻く。

『羨ましい、のか?』

セキュリティー重視と言われた生活感の欠片もないホテルの一室で、やたらと娯楽が少ないことを気にしてくる彼女を見て頭を振る。そんな筈はない。何かを羨ましがるなんて、他の奴等の個性だけで、自分にない勇気だけで十分だ。半ば不貞腐れた形で早い就寝についた相澤は、ミラージュと呼ばれた女ヒーローが自分を酷く心配そうに見つめていることに気が付きはしなかった。


ピンポーン♪


「事務所の先輩です。昨日頼んでいたものを持って来てくれたみたいなので、ちょっと貰いに行ってきますね!」
「ええ。」

朝食を食べ終えたあたりで部屋のチャイムが鳴って固まった自分とは違い、嬉々としてドアへと向かうミラージュ。ずいぶんと嬉しそうだが、来たのはどんなヒーローだろうか?そう疑問に思っていると、2人がこちらへ向かってくるではないか。

「うぉ!ほんとに縮んじまってら。」
「ちょ、怒られますよ。」
「そうか?いやー、暗い感じはまんまなのな!」
「後で怒られても知らんぷりしますからね。」
「…」

やってきた快活そうな男ヒーローが物珍しそうに観察してきて、その視線や言葉が煩わしくて。こんなデリカシーのない奴がヒーローとは世も末ではと思い至る。じとりと疑念の視線を向けていると、ミラージュが困ったように娯楽を持って来てもらったんですと言った。

『気にしてるとは思ってたけど、そこまでするか?』

苦笑する彼女をお人好しだなと思っていると、男ヒーローが手に持っていた鞄から本やらゲームソフトやらを取り出していく。直ぐに戻るだろうに、こんなに必要ないのでは?そんな疑問をぶつけようとするより先に、男がミラージュに茶くらい出せよと言って、彼女は渋々ではあったがキッチンの方へ行ってしまう。コミュニケーション能力の高い方ではない相澤は、急に出来上がった空間に居心地が悪くなった。

「ほれ。」
「なんですか、これ…。」
「タブレット。今日ミラだけ視聴できるようになってるぞ。」
「きょうみら?」
「今日のミラージュ。略して今日ミラ。自分の事護衛してるヒーローの事くらい知りたいんじゃねーの?お前そういうタイプだろ。」
「…ありがとうございます。」
「いーってことよ。」

ばしりと背中を叩かれて、未来の自分の周囲にはこんなにも自分を知っている人がいるのかと目尻が熱くなった。

「お茶持ってきましたよー。って、先輩何してるんですか…。」
「なーに、男同士のあれやこれやってのがあってだな。」
「ちょ、」
「それセクハラですよ。イエロー通り越してレッドです。」
「は、一昨日ほぼマッパが世間様に報道された奴には負けるぜ。」
「な!?あれは相手の個性が!!って、相澤さん違うの!誤解だから!そんなヤバいやつ見る目で見ないで!?」

いや、それどんな個性だよ。慌てふためくミラージュにそんな質問を飛ばせるほどの人間ではなくて。手元のタブレットを持つ手に力が入るだけだった。

『いざ行かん!!フハハハハハハ!!!!』

『なにこれぇぇぇええええええ!!!!!!』
『ウサギじゃぁぁあああい!!!!!!』

『イエス!貴方のハートに電撃ビームッ!』

深夜、それぞれが寝室で寝静まってから、相澤は渡されたタブレットを起動させた。一緒に渡されたイヤホンを付けて、次々に流れていく5分のミニ番組を見ていく。ある時は怪盗よろしく空を飛び、ある時は頭にウサギの耳を生やし、またある時は半裸で電磁波をビーム照射し。

「ブフッ、何だよコイツ。」

ころころ変わるミラージュの人格に、相澤の心は卑屈になるよりも愉快になっていった。もしかしたら番組の編集上そう思っただけかもしれない。だがそんな勘繰りは働かず、個性だけでなく性格までも変わって、自由奔放に動き回るヒーロー『ミラージュ』に釘付けになった。そして、ふと思い至る。今日ミラというタイトル通り、これは毎日放送されているミニ番組だ。それなのに、当のミラージュは昨日から自分の護衛をしている。つまり公に個性を使っていない。イコール放送するネタがないのでは?一気に血の気の引いた相澤は、ベッドを飛び出した。

「ミラージュ!」
「ひょえ!?え、なに、てき?敵襲!?」
「ちがっ、俺です、相澤です!」
「え、ちょ、顔真っ青じゃないですか!?具合悪いんですか!!?」
「そうじゃない!そうじゃなくて!これっ!」

駆け込んだ彼女の寝室で大声を出せば、すわ敵襲かと構えだした彼女を止めて。電気をつけると、俺の顔色が悪いと慌てだした彼女を諌め、手に持っていたタブレットを差し出す。映し出された今日ミラの動画に、ミラージュの表情が驚きに変わった。

「今日、貸してもらったんです。今日ミラだけ見れる端末だって。」
「あんの馬鹿先輩っ…。」
「それで、これ毎日やってる奴ですよね?」
「えーっと、番組はそうですね。」
「じゃあ、昨日と今日の分は!?」
「へ?」
「俺の護衛とかしてる場合じゃないだろ!皆が、皆、アンタの姿を待ってんだ!!」
「お、落ち着いて相ざ!」
「落ち着けるか!」
「消太先輩!!」
「っ!?」
「落ち着いてください。これ、映像のストックがあるんです。」
「そう、なんだ。」
「ええ、護衛任務もこれが初めてじゃありませんし、毎日個性を映しているわけじゃないので。それにどうしようもなくなった時は、再放送や傑作選とか放送されてますから…。」
「よかった…、俺のせいで…。」
「相澤さん、大丈夫ですよ。相澤さんのせいだなんてものはどこにもないんです。」
「でも、」
「私はヒーローです。困っている人を、危険な人を助けるのが仕事です。」
「それは、」
「そこには、今の相澤さんも当てはまるんですよ。」
「っ!?」
「どんなことが原因でとか、個性がどうとか、お金持ちだとかそうじゃないとか、関係ないんです。急に知らないところに来てしまった相澤さんだって、困っている人の一人なんです。私が守るべき人の一人なんです。」
「ミラージュ。」
「だから、自分なんてとか、せいだなんて言わないでください。責めるのであれば、君を個性で攻撃してきた敵に対してで充分です。」

タブレットを持つ己の手に添えられた彼女の手が温かくて、それ以上に自分に向けられた言葉と微笑みが温かくて。相澤は胸に込み上げる熱い感情を感じ、赴くままにミラージュを押し倒していた。

「あ、相澤さん?」
「ミラージュ。」
「へ、あ、あの、え!?駄目!駄目です!!」
「なんで?」
「何でって!?君、未成年!!」
「本気ならいいんですよね?」
「ほん!?って、そういう問題じゃっ!」
「黙って。」

驚きに見開かれた瞳に、切羽詰まった己の顔が写り込んでいて。無視して顔を近づけて、いよいよ唇同士が触れる。その瞬間、強烈な頭突きが相澤を襲った。


「ぐえっ!」
「ぐぅ、いってぇ。あ゛?」
「ぜっぱ、どい」
「わり。何でお前押し倒されてんだ?ん?何処だここ?」
「説明します、しますから!とりあえず退いてください!!」

渋々ミラージュの上から退いた元通りの相澤に、個性で若返っていたことを告げると、高1に押し倒されてたのかとため息をつかれ。何で逃げなかったんだよと言う問いに、即答できず、機嫌を悪くした彼に後ろから抱きしめられながら今日ミラを視聴すると言う羞恥プレイをされたのだった。

【公式】今日のミラージュ@kyomiraさんが写真をアップしました。
傑作選放送決定!
#今日ミラ傑作選で君の好きなミラージュを投稿しよう!

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