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ヒロッターで婿を募集した件について
@mirage_xxxx
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「うう、なんでこんな時に限って…。」
「元から予定に入ってただろうが。」
「イレイザー先輩!私帰ってもいいですか!?」
「いいわけねぇだろ。ふざけんな。」
「うわぁぁあ!生徒に会わせる顔がぁあ!!」
「諦めろ。」
昼に差し掛かる時間、私はヒーローコスチュームを着て雄英高校の正門の前にいた。帰りたい、逃げたいと呟いていると、門番の人が職員室に通報でもしたのだろうか、今日私をここに呼んだ先輩に捕まった。そして現在、ズルズルと校門から校舎までの間を、先輩ことイレイザーヘッドに引き摺られている最中。
「離してぇえ!!あれは、あれは故意ではないんですうぅうう!!」
「お前な…、無意識でやってる方がヤバイだろ。」
「無意識とかじゃなくて、覚えてないんですって!!酔っぱらってて!!」
「身から出た錆だ。やっぱ諦めろ。」
「そんな殺生な!!こんな可哀想な後輩を、生徒たちの前に引き摺り出すんですか!?」
「ああ。と言うかそんなに結婚したいのか?」
「もう三十路までカウントダウン切ったんです!あああ!!もうこの際先輩でも良いので、娶って下さいよおおお!!!」
襟を引き摺られていて苦し紛れだが言い合っていると、ピタリとイレイザー先輩の声が止んだ。どうしたのかと彼の方を見ると、血走った目を見開いてこちらを見ている。単純に怖い。
「グッモォオオニーン、ミラージュ!!」
「ひっ、マイク先輩!!助かりました!」
「おい、どういうことだ…。」
「ナニナニ?このプレゼントマイク様に惚れたって??」
「どこをどう聞いたらそうなるマイク。」
「ハァン?羨ましいこと言われたからって、固まってるような野郎にゃ興味ねーぜ。」
「ちょ、先輩方!」
見上げる先で顔を付き合わせて火花を出す二人に、こんなに仲悪い?もといよかったっけと疑問を感じる。しかし首がいたい。限界だとイレイザー先輩を呼ぶと、悪いと謝罪され襟元から手が離れた。
「い、今のうちに!!ぐぇっ。」
「何してんの鏡子ちゃん?」
「昨日のが恥ずかしくて帰ろうとすんだよ。まったく、諦めろって言ってんだろ、鏡子。」
脱兎のごとく踵を返した私は、今度は捕縛布で取り押さえられた。先輩方はそれぞれにため息をついたあと、顔を見合わせて私本体はマイク先輩が、捕縛布は切らないままイレイザー先輩の手元に収まる。芋虫をお姫様抱っこという微妙な構図で、私は構内へ連れていかれたのだった。
「チャイム鳴ったら席つけ。」
「ヒュウ!きっびしー!!」
「うぇ、せんぱ、おろし…。」
ガタンと勢いよく開けられた扉の先には、懐かしいヒーロー科の教室が広がっていた。しかし成人男性二人から真横に担がれた私は干渉に浸る暇もなく、縦揺れに負けて意識が遠退いていく。
「わぁ、生ミラージュ。」
「捕縛されてる…。」
「マイク先生変わってくれないかな。」
「ミラージュ!!オイラ、婿にっへぶし!!」
「お前のクラス、やっぱ個性豊かダナー。」
「知るか…って、おいマイク、そいつ落ちてるぞ。」
「へ?ホーリーシット!なんてこった!おいミラージュ!!アァユゥオーケー?」
『あ、返事がない。ただの屍…。』
「オーイ!ミラージュちゃーん?だめだな、ここはアツーイ人工呼吸で!って、何SOON!!」
『ナイス相澤先生!』
「黙れマイク。おら、ミラージュ。起きろ。」
『え、めっちゃ揺すっとる!?カクンカクンて首座ってるのあれ!?!?』
「イ、イレイザー!手荒すぎんだろ!?」
「んう…。」
『起きた!!』
「起きたか?ほら、自己紹介。」
「へ?」
『あ、フリーズした。』
物凄い勢いで揺さぶられ目を覚ますと、イレイザー先輩から早くしろと促される。自己紹介?誰に?と何やら視線を感じる方に顔を動かせば、ポカーンとした少年少女が行儀よく着席していた。
「むりむりむりむり…、無理ですゥぅううう!!うぇだ!?」
「だから、逃げるな馬鹿。」
「いやーだぁあ!捕縛布解いてくださいいいい!」
「ミラージュ、諦めも肝心だぜ?」
「うう、マイク先輩まで…。」
「お前ら素を見たことないだろうが、こいつがヒーローのミラージュだ。」
『あれが素!?』
「あ、あの…。」
「ん?どーした緑谷リスナー?」
「お二人とミラージュってお知り合いなんですか?その、昨日のヒロッターも早いタイミングでメッセージ送られてたんで…。」
「それ!あの相澤先生がって驚いたんだよな!」
「ミラージュぅう!オイラ婿に、へぶっ!!」
「グッドクエスチョンだ!俺達は先輩後輩なんだぜ!!」
「仲良いとかそう言うレベルじゃねえな。真似され、鼓膜潰され、個性消し合った仲だ。」
「イレイザー先輩その表現怖いです。マイク先輩の言う通り、私は二人の一学年後輩です。三人で個性訓練をしてたので、二人には大変お世話になりました。」
「そ、そうだったんですね!あのイレイザーヘッドとプレゼントマイクと訓練を!真似っこの原点がこんなに近くに居るなんて…。」
「えと…。あの子大丈夫ですか?」
「ああ、あれで平常運転だ。良い機会だ、お前らこいつに聞きたいこと聞いとけ。終わったら演習訓練だ。」
逃げるのを諦めたのが伝わったのだろうか。イレイザー先輩が捕縛布を解いてくれた。案外きつかった拘束に、腕をさすっているとマイク先輩が心配してくれる。そんな私達をよそに、生徒達は一斉に挙手し出した。
「おー!リスナー達元気だな!じゃあ、普段寡黙な男は何を聞く!?トコヤミ!」
「何でお前が進行するんだ…。てか、授業はどうした?」
「今の時間はフリーだ!ヘイセイ!常闇!!」
「では…、ミラージュは異形系は映してるところを見たことがない。それは個性の効果範囲外と言うことだろうか?」
「ホウホウ!真面目だな!!どうよミラージュ?」
「初っぱなから凄い質問ですね…。常闇君?の言う通り、私の個性は異形系は映し取れません。よく観察してるんですね。」
「勿体ない言葉。因みに影などは…。」
「あ、ズリーぞ常闇!雷は!?」
「影?雷??えっと、どちらもたぶん映せると思います。」
「いや、常闇の個性はダメだろうな。意志がある。」
「影に意識!?そうなってくると無理ですね。」
「む、そうか。」
「よっしゃ、じゃあ次は八百万いってみっか!」
「あの…ミラージュさんと言えば、相手の個性を真似できる大変すばらしい個性の持ち主でいらっしゃいますが…。その、副作用と言いますか、あの性格まで変わってしまうデメリットとはどのように向き合ってらっしゃるのでしょうか?」
「…先輩、私の聞き間違いでしょうか?あの美少女、今向き合うって言いましたか?え、向き合う?アレと?ムキアウ??」
「すまん八百万、今の質問はなしにしてくれないか?」
「えぇ、ミラージュさん申し訳ありませんわ。」
『全然向き合えてないんだ…。』
「あいっ変わらずあの状態嫌いなんだな!面白いし、メディア受けもいいじゃねーか。何が不満よ??」
『爆弾投下した!?』
「シャラップ!年上だからって、何でも許されると思うんじゃねえぞ!?」
「オウ!?いきなり真似てきたな!!」
「え、もしかして個性発動されてるんですか!!?」
「いや、単純にテンパり過ぎて他人の性格に充てられてるだけだ。」
『え…それって…。』
「ケッ、ただの精神不安定女だろ。」
「ヘイヘイ!男子リスナー!!」
『爆豪〜!!?』
「はぁ…。取り敢えずお前ら、今日はこいつに面倒見てもらう。しっかり揉んで貰え。鏡子もいい加減落ち着け。」
『鏡子ってもしかして!?』
「はっ!?私また!すみません…。」
「あの…ケロッ、鏡子さんと言うのは、ミラージュの本名?」
「あちゃー、気になっちゃうよなそこ〜?」
「…お前ら移動するぞ。」
「ちょ、イレイザー先輩!自己紹介位させてくださいよ!えっと、皆さんはじめまして、ミラージュこと水面鏡子です。今日はよろしくお願いします!」
「鏡子さん、オイラむ、へぶっ!!」
「ほ、捕縛布顔面キャッチ…」
「ヒュウ♪やるねぇ。」
「お前、先バス停行ってろ。」
「はい?イタッイタイタイ!!?わかりましたっ!じゃあ、また後で!」
相澤先輩とマイク先輩に閉め出された教室内で、何があっていたのか考えることもなく、来たときよりも軽い足取りでバス停へと向かったのだった。
イレイザーヘッド@eraser.head他201,904人がいいね!しました。
(おい、お前ら。あいつの本名は忘れろ。)
(へ?)
(ったく、お前が口に出すからだろー?生徒にまで嫉妬振り撒く奴は、相応しくないと思うぜ?)
(黙れマイク。公害コンビの方が相応しくないんじゃないか?)
(ハァン?アイツも居ることだし、今日こそ決着付けるか…。)
(望むところだ…。)
(あ、この人達…。勝ち目ねぇな。)
(校内バスー。今日はあの爆豪君とやらを映そうかな…。)
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