近くて遠い理想
私が愚かだなんて、自分がよく分かってる。


「ねえ、ウォリックさん。」


「どったの?」


「ニコラスさんの好みって、  どんな女性?」


一瞬、黒髪でナイスバディな彼女が頭の片隅にチラついたけど、気が付かないふりをして相棒の彼に問いかける。


「アイツねぇ、」


少し考える様なウォリックさんを横眼で見つつ、やっぱり先程の女性の姿が頭から離れない。


「―だしょ、って、聞いてるナナシちゃん?」


「すみません、殆ど聞いてませんでしたけど、 ウォリックさんの好みは聞いてません。」


「つれないね〜。」


そんな所も可愛いけどねぇと言われても、私が知りたいのは貴方ではなくニコラスさんの好みなのだから仕方がない。


「でもねぇ、ナナシちゃん、」


分かってるでしょ?



じっと私の眼を見ながらウォリックさんは告げた。あぁ、頭の中で彼女がいつものように私に笑いかけてる。


「でも、 もしかしたら違うかもしれないじゃないですか・・・」


「ナナシちゃん。」


「ほんとは、分かってますよ?でもっ、だからって―。
ウォリックさん、私ね、悪あがきだって、笑われたっていいんです。」


隠し通せるほど嘘をつくのは上手くない。ニコラスさんが傍に居るだけで私が舞いあがってるのは、皆知ってる。こないだモンローさんにだってからかわれたんだ。皆バレばれだって言うけど、辞めろって言われるけど


「それでも、私は彼の理想に近づきたいって思うんだから仕方ないじゃないですか。」


いつものように脳内で私に笑いかける彼女に銃口を向ける自分が心底憎い。





近づきたいけど、到底無理な私の理想






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