いえないがんぼう
君に言えないことがある。
「おはようございます、アドルフさん。」
ナマエからの挨拶。それは他の奴らとは全く違う響きを持って俺の耳に入る。
「おはよう。今日も早いな。」
「お早いアドルフさんの力になりたいんです。」
可愛らしい俺のナマエ。俺用のコーヒーを片手に、何から片付けますか?と微笑んでくれる彼女は今の自分の全てで、原動力だ。
「じゃあ、この書類を頼む。」
そんな彼女に言えないことがある。
『ナマエの心は何時まで俺を映していてくれるだろうか?』
元嫁のように、何時かは俺ではない人間を想うのだろうか?艦長、膝丸、マルコス、俺より男前が此処には揃っている。
書類に向かうあの美しい瞳が、何時かは誰かに向けられるのか?それでいいのか?いいわけあるか!
ナマエの心を、想いを俺だけの物にする方法。それは至ってシンプルだ。実行すれば確実に、そして永遠にナマエは俺だけのものになる。
「大丈夫ですか?アドルフさん、顔色悪いですよ。」
きっと他人は許してくれない。法律も、世間も、仲間も…。今更どうでもいい気はするが。
「寝不足なだけだ。心配するな。」
だが、心配そうな瞳に映る自分、それすらも永遠に見られなくなる。それは少し、いやかなり惜しいことだと思う。
いえないがんぼう
(ナマエに死んで欲しい。)
(なんて、言えるわけがない。)
あとがき
何でこんなことになってるんでしょう…!?
とある曲を聞きながら書いたものです。絶対アドルフさんや!と思ってしまったんですよ。
両親のこと、実験、奥さんと子供、それらで人に嫌われる、というか孤独、絶望に落とされる恐怖を常に持っているのではないかな?と。愛し愛されているけど、何時か捨てられるのではないか?じゃあ、今この瞬間で彼女の時を止めてしまえばいいのでは?あそうか、彼女が死ねばいいじゃないか。
こんな思考過程を作っちゃってる気がしたのですよ!いや、一番危ないのはこんなことに思い至る自分なんですけどね!
お目汚し失礼しましたぁぁあああ!!!
inspired by 「いえない」