手のひらからエールを
プシュッ・・・


「あー、生き返る」


風呂上がり缶ビール煽りながらテレビをつける。
服なんて来ているかわからないような格好だが、ここは自室。見るやつもいなければ、叱る者もいない。


「正に天国!!」


そのままベッドに飛び込んで、ビールをこぼさないように寝ころんだ。ザッピングしながら一口、また一口と進んでいく。


『実力もないくせして、お局面してさー。』


お昼に聞いた言葉が離れない。画面では面白いのかよくわからない芸人が画面の中で騒いでいて、どこかにいるだろう観客が笑う。


「何がおもしろいんかね〜。」


突然の声に相手など確かめず飛びのいた。ずり落ちるように着地してみた先には小吉が手を振っていた。


「なに、してんの?」


「ん〜、顔見に来た。」


「いや、間違えた。どうやって入ったの・・・」


「そこは、愛の力??」


特に用はないよと言い切る笑顔の髭面。だったら人の寿命を縮めるような真似はしないでほしい。男の言う愛の力への恐怖とせっかくの平穏を壊されて恐らく今の私の顔は般若なみだと思う。


「怖い顔!そんな顔しなくたっていいだろ。」


「誰のせいよ、誰の。こちとらいろいろあって気が立ってんの。」


「昼のあれだろ?」


「わかってんなら、そっとしときなさいよ。」


人のいい笑顔浮かべておきながらこの男は容赦がない。何の躊躇もなく傷をえぐってくる。そんな男の笑顔なんて見ていたくなくてそっぽを向いた。


「気にすることないと思うけどなぁ。」


「どっかの艦長さんみたいに楽観的な人間じゃないの。」


ベッドが沈む。まさかと思ってそちらを向けば、至近距離に見慣れた髭面があった。


「お前は頑張ってるよ。」


「なに、よっ・・・」


冗談めいてなんていない、優しい声色と慈しむような笑顔。目が熱くなる。ふざけるなと罵ってやりたいが、それどころじゃない。零さないように眉に力を入れていると、そっと大きな手が頭を撫でた。


「あいつらも、もうちょっとしたら分かるようになるって。」


「ばっかじゃない?」


止まらない涙をぬぐっている間、彼はずっと私の頭を撫でていた。



手のひらからエールを








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