聖人君子?
「おえぇえええ、ぎもぢわるい・・・」
「あんなに飲むからですよ。」
「うるっさい。女にだって飲まなきゃならん時があんのよっ!」
『だからって、こんなに酔っ払ってて襲われでもしたらどうするんですか!?』
前後不覚なナマエさんを艦長から頼まれたのはついさっきの事。
いつも皆の前を行く姉の様な存在の彼女は、アレックスの巧みな話術に掛かり、マルコスと飲み比べをしていた。普通ならザル同然の彼女も、年を越してなお毎日入る飲み会に参っていたらしく、潰れてしまったよう。
『うぅっ、当たる・・・』
負ぶっていると自然と背中に当る柔らかい感触に、どうしても邪な感情が芽生えてしまう。しかし、一応彼女は幹部の一人。ミッシェルさん同様、絶大な人気と信頼を得る彼女に
手を出すなんて・・・
「ん〜慶次〜」
「ちょ、ナマエさん!!」
彼女は何を思ったのか、首にまわっていた腕に力を込めた。力を失った首は俺の首に埋まるようにしていて、ナマエさんの息遣いが耳元で聞こえる。
『いくらなんでも、やべぇ・・・』
ごくりと生唾を飲み込んで、凌ごうとした
「ん、けい じ」
ブチッ
何かが切れた音が派手にして、彼女の家に向かっていた足は
そのまま彼女の家を通り過ぎた。
聖人君子??
いいえ、送り狼です。
(鋼の精神?)
(耳元であんな声聞いたら、もう止まらない。)