遅すぎた自覚
えろですね
あーあ、気付かなければよかった。
『貴方に負けないくらい真っ青だったのよ。』
そう言ってクスクスと笑うなまえを見たとき、自分の患者が倒れたと知って年甲斐もなく慌ててしまったことへの事実に顔を赤く染めてしまったが、内心は見事に冷めていた。
― 何故そんなことをお嬢ちゃんに話す必要があるのか? ―
予想外に重い症状が出たことへの不安を解消するため?俺の声色に萎縮してしまったお嬢ちゃんを慰めるため?
いや、違う。なまえとは長い付き合いだから、分かったんだろーね。俺がお嬢ちゃんに気を許しだしたことを・・・
「だからって、ねぇっ?」
「あぁんっ!? んっ、あっ、やぁあ 」
引きずり込んだ執務室で、いつものようになまえを抱く。いや、いつものようにじゃないわ。バックは初めてだもんな。
「初めてのっカッコだけど、いいみたいだねー」
「ひっ、せん、やめっ」
「るわけないでしょっ!」
掴んでいた腰を更に引き寄せ、ドロドロに溶けた蜜壺に容赦なく突き刺す。白いなまえの中に己の赤黒い欲望が穿たれる様は、興奮を酷くする。
ここが職場だとか忘れて、乱れる彼女の姿を見ることができるのは自分だけ。
「や、ぁあ、あっ、あん、も、むっ、ひあぁあああ!!」
なまえの悲鳴の後に来る締め付けで、自分も白濁を吐き出した。
「いなくならないで、か。」
自分が言った言葉。こいつはきっと、倒れてしまったお嬢ちゃんに向けた言葉だと思ってる。本当は違うと、診察室で見せた頬笑みに腹が立ったんだ。俺とお嬢ちゃんをくっ付けて、自分はいなくなるつもりなんだと気付いた瞬間。
「今更だな・・・」
遅すぎた自覚