在り来たりのさいご
暗い???






肺が痛い。機動が低い私には速く走ることは愚か、長く走ることさえ向いていないのだろう。だが、それでも走らなければならないんだ。



其れは愛ではないと思っていた。


其れは君が主だから、だから己は君に触れないのだと思っていた。


君が主であるから。他でもない君だから。ただそれだけだったんだよ。君を見守ると誓った理由なんてものは。


2人でそれぞれ引いてしまった線を越えて君を探しているんだ。きっと君は怒るんだろうね。いつか己を省みず大怪我を負って帰って来た短刀に見せた怒りより、更に酷く。君は怒りの表情を見せるんだろうね。そうして、きっと言うんだ。『石切丸、何故貴方が?』って。分かってるよ。お互いに、踏み止まるために引いた線なんだ。分かっているよ。


「でもっ、ね。其れ、でも壊す、よ。」


息も絶え絶えになりながら私は走る。昨日まで2人縁側で見ていた、庭を駆け回る短刀達。彼らならば、こんな惨めな姿を晒さずに済んだのだろう。残念ながら、私は大太刀だからね。申し訳ないよ本当に、こんな時に彼らの様に早く君の元に駆けつけることのできる私であれば、そう思わずにはいられないんだ。


『この戦いが終わったら、どうなるんでしょうね。』


いつか、君がぽつりと溢した疑問。それが今、そう今現実に起こっている。


私たちは戦いを終え、無事に歴史を守りきった。全ての物が、満身創痍の中、安堵の息を付き休息をとっている時。そんな時なのに、彼らは彼女を連れて行ってしまったのだ!何と、何と口惜しいのだろうか。我らが使え、家族と慕う彼女を突然攫ったのだ。


勿論皆が騒然とし、慌て後を追おうとした。だが傷付いた身ではそう簡単にいかない。苦虫をつぶしたような物達を残し、辛うじて動けた私が彼女を追いかけた。辛うじてではないな、いつの日か彼女が言っていた、私は彼女の元に来た初めての大太刀なのだと。それ故に来た早々から無理をさせていると申し訳ない顔をしていたが、きっとそのおかげで私は今君を追いかけることができているのだろう。


『あるじさま、あしたはいっしょにあそびましょうね!やくそくですよ!!』


『んー、ごめんね、約束は出来ないや。あぁ!でも努力はするから!!だからそんな悲しい顔しないで?ね?』


君は叶えられるか分からない約束はしないと言っていたね。そして、「約束をしない」、其れがこの場所で君が唯一私たちに課した決めごとだった。確かに、翌日無理をした君が倒れて今剣のお願は聞き入れられなかったよね。私たちのお願に己を省みず努力する君を目の当たりにして、私たちがお願いすることを減らしたのは分かっているかい?そして日々戦いに身を投じる中で悟った、明日の不明確さを持って、いよいよ私たちから約束を言いだすことも辞めたんだ。何とおかしいのだろうね。私たちが私たちである為の歴史を守っているにもかかわらず、その当人たちは己に従うことができないなんて。全く、我々が守っていたものは何だったのだろうか?


まだ動けたからといっても、其れなりの怪我は折っていた訳で、本当に息が切れてどうしようもない。あぁ、彼方に見える数人の背は、黒い背の中に囲まれる唯一の白い背は、君の物だろうか?幻でもいい、君に追いつきたいという私が見せた幻想でもいいから。私のこの肺が止まる前に、その背に、肩に触れさせてくれないかな。伸ばした手の指先が淡く光となり溶け出していることなんてこの際気にしないから。


ぜいぜい言いながら走っているのに、体が軽くなる。何故だと疑問に思い、周囲を見渡すと己の周りに光が立ち込めていることに気が付いた。あぁ、これで少しは早く走れるよ。先程まで感じていた肺の痛みも引いて来ているんだ。これで君に追いつくことができる。そうだ、先にも思ったが君は恐らく何故追いかけてきたのだと、しかもそれが何故私なのかと聞くのだろう。その時の答えを用意しないといけない。その場で考える様な在り来たりな、陳腐な言葉は君には送れないよ。ふむ、だけどしかし・・・


「愛おしいと伝える他、良い言葉が浮かばないものだなぁ。」





在り来たりのさいご









あとがき
すみませんでしたぁぁああああああ!!!!!!!!!!!!!!
ついにやってしまいました。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいいいいい。


ふと聞いていた曲が何とも言え無くて、最近にしてはすごく筆?タイピングが進みました。はい。


もう本当に内容は私の勝手な妄想です。本当に御免さいです。


最後までお目通しありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!



inspired by sharp#









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