How do I...

私たち人間は神の子ども―


内地の司祭がそう誇張していた。全知全能の一片を与えられたからこそ、人は食物連鎖の上に立ち然るべき技術を発展させているのだと。取り巻きは盲目的にそれを信じている。


自分達は素晴らしい存在―


本当にそうなのだろうか?彼らは私の目の前に広がるこの光景を見ても、同じことが言えるのだろうか?きっと言えないだろう。


耳を劈くような断末魔と肉と骨が拉げる音が荒野に響く。今朝方まで笑い合っていた仲間が捕食されていた。私達よりも遥かに大きな『巨人』と言う存在に。私達は遠い昔から巨人に支配されている。知能で勝っても、圧倒的な力には全く歯が立たなかった。彼らも分かっている筈。私達は頂点になど君臨できていない。


「ナナバ撤退だ!」


遠くで撤退の狼煙が上がり、偶々近くにいたギーナが声を張り上げる。その声に部下達が渾身の力を振り絞って最後の2m級を倒した。


壁に戻る道中にしゃべる者は居なかった。普段おしゃべりなギーナも今回ばかりは押し黙っている。皆酷い顔をして、所々に転がる仲間だったものから眼を逸らしてばかり。壁に着いても安堵なんて感じられなかった。帰還した兵士は出発時の2/3。


「ねぇ、ギーナ。」


「あ?今頃負傷したとか言うんじゃねぇよな?」


報告と救護活動を終えた彼が私の隣に腰を下ろした。壁の最上部に腰かける私たちの目下には奴らが蠢いている。それを一瞥し、先の問いを否定した。


「どうして、神様とやらは私達をこの世界に墜としたんだろうか?」


そう、仮に私達が本当に神の子だとして、何故創造主はこんな腐敗した世界に私達を創ったんだろう。壁に遮られた狭い世界。それだけでも窮屈だったのに、手にしていた平穏はつい最近跡形もなく崩れた。


「また同期が減ったんだってな…」


「うん、」


布越しに触れているのに、腿に伝わる不愉快な壁の冷たさ。縋りつく手を払われた様な絶望感。それは昼に抱きとめた同期の体温に似ている。


「私は、奴らに食われるために生まれたんじゃないよ。」


「当たり前だろーが。俺だってそうだ。」


「ギーナは囮じゃないの?」


「ちげぇけど、まぁなってやるよ。ナナバのだったらな。」


「…その時は頼むよ。」


生まれ墜ちたのは腐敗しきった世界。ここでは何を信じていいのかよく分からない。盲信していた壁にさえ裏切られたのだから。人々は次に縋る物を必死に探している。あんなことを言ったが、私はギーナの次なんて考えたくもない。




How do I live on such a field?



(ギーナに出会えたこと)


(それは唯一の救い)









あとがき
暗いよぉおおおおおお!?仕方ないっちゃ、仕方ないんすけど、ほのぼの書きたい!!!


原作では『残酷』な世界って感じですが、敢えて『腐敗』にしてみました。意味変わっちゃうんですけどね…


こんなんでしたが、此処まで読んで下さってありがとうございました!!!!


inspired by 月光




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