貴女が変わろうと、貴女と私は変わらないで
私「碓水梓紗」という人間の中で、江迎怒江ちゃんという人間は、ただひたすら憧れの存在だった。過負荷が過負荷に憧れを持つ、なんていうのは変かもしれない。だけどそんなのはただの普通な人間のちっぽけでクズでカスな感性であって、私からすれば怒江ちゃんは本当に、天の存在だった。
怒江ちゃんは、私と同じ女の子とは思えないくらい、本当に本当に可愛くて、本当に本当に愛おしくて大切だった。怒江ちゃんと居られれば、怒江ちゃんが幸せなら、怒江ちゃんが笑えたのなら、それが全部私にとっては死んでもいいくらい嬉しくて、兎に角、私は怒江ちゃんが好きで大好きで愛して仕方なかった。だから、だから、
「梓紗、ちゃん?」
球磨川先輩から、怒江ちゃんが改心したって聞いた。聞いた瞬間、私は凄い顔をしていたと思う。怒江ちゃんが改心した?なにそれ?え?どういうこと?怒江ちゃんは怒江ちゃんじゃなくなったの?そう思ったら、恐くて恐くて恐くて、怒江ちゃんを改心させた奴を殺してやろうと思った。
「む、かえ、ちゃん…」
だけど、怒江ちゃんは全く変わっていなかった。怒江ちゃんは、怒江ちゃんのままで、可愛い可愛い怒江ちゃんだった。それが分かったら、凄く凄く、胸の中があったかくなって、
「ご、ごめんね…梓紗ちゃん」
「怒江ちゃん?なんで、なん、で、謝るの?」
「だって…だって私っ…梓紗ちゃんのこと、なんにも、考えないで…幸せに、なりたいとか…思っちゃって…っ」
「怒江ちゃん…」
「ごめんね、こんな私、嫌いだよね、ごめんね、ごめんねっ、梓紗ちゃん…!」
ぽろぽろ。綺麗な涙を流す怒江ちゃんが、また可愛くて、抱き締めたくて、独り占めしたくて、だけど、でもやっぱり胸が苦しくて、怒江ちゃんは笑ってるのが一番好き。
「いいの、いいんだよ、怒江ちゃん」
「梓紗ちゃん…っ」
「怒江ちゃん。私達、親友でしょ?私、怒江ちゃん大好きだよ」
怒江ちゃんが誰を好きであろうと、愛していようと。私は怒江ちゃんが大好きだよ。怒江ちゃんがどんなに変わっても、怒江ちゃんが大好きだよ。だってどんなに変わっても怒江ちゃんは怒江ちゃんだもん。怒江ちゃんが過負荷じゃなくなっても、異常になっても普通になっても。どんな怒江ちゃんでも、怒江ちゃんは怒江ちゃんだから私は怒江ちゃんが大好き。怒江ちゃんを傷つける奴が居たら、そいつが死なない程度に全身の骨を折って、皮膚も剥いで目玉もくりぬいて、口も縫い合わせちゃって、手と足の爪全部剥がして、で、そのままそいつが自然に死んでいくのを待つの。それって、凄く苦しいでしょ?殺してくれーって叫ばせないの。だって口縫い合わせちゃうんだもん。怒江ちゃんが傷つくなんて、私には堪えられないもん。私、怒江ちゃんにはずっとずっと笑ってて欲しいの。怒江ちゃんには、誰よりも幸せになって貰いたいの。だって怒江ちゃんは私の大好きな親友だもん。怒江ちゃんの為なら私は何でもするよ。殺人だって詐欺だって強盗だって、なんだって。どんな罪でも、なんだってするよ。だって私、怒江ちゃんが居ないと駄目だもん。重い、かな?重いよね。異性なら兎も角、同性だし。でもね、でもね怒江ちゃん。
「私、怒江ちゃんが居ないと…駄目、だから…だから、だから怒江ちゃん」
お願い。嫌いにならないで、変わっても変わらないで居て。
(ならないよ、嫌いなんかに。だって、梓紗ちゃんは私の親友だもの)
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