ふとした瞬間、何気なく空を見上げると真っ白な巨大な雲のかたまりとその隙間から覗くまさに水青色の空。
その景色をみると、あぁ、夏だなぁ、とわけもなくしみじみと思う。



「何してるの?」

「あー、マツバ。」



私の視界に金色と紫が飛び込んできた。マツバだ。
空の色と彼の髪のコントラストがすこし、眩しい。



「別になにもやってないよー?」



そして彼の質問に答える。
私は暑さに耐えかねて何もしてないのに涼しいと感じるマツバの家に勝手に遊びに来て、勝手に彼の家の縁側を一ヶ所を陣取っているだけなのだ。
特にここ縁側は心地好い風も吹くし日陰だしで、ラスボス級の暑さから逃げられるのだ。



「そう?じっ、と空を見てるみたいだったから何かあったのかと思った。」

「え?私そんなにガン見してた?」

「かなり。」




マジかー。
そんなに眺めてるつもりはなかったんだけどなぁ。

縁側から足を垂らし、ぷらぷらとさせながらそんなことを思う。(余談だが、マツバの家の縁側は高いので私が足を垂らしても地面までまだ高さがあるのだ。ぶらぶらさせられるって素晴らしい!)



からん、



なんだか涼やかな音に、目をそちらに向ける。
するといつの間にか私と同じように縁側に座っていたマツバが氷の入ったグラスで麦茶を飲んでいた。



「ほら、ナマエの分はそっち。」



彼に指差された先には小さなお盆に乗った麦茶が。

きっと勝手に遊びに来た私のために持ってきてくれたのだろう。
いや、自分の分のついでに、って考え方もできるが。



「ありがとー、マツバ。」

「ん、」



とりあえずお礼を言って、その冷たそうな麦茶に手を伸ばす。



からん、



今度は私の持っているグラスから氷の音が聞こえる。

冷たい麦茶は思った以上に美味しくて、つい一気飲みをしてしまった。



「ぷはー、生き返る!!」

「なんかそれおっさんくさいよ。」

「うるさいなぁ、」



ちびちびと麦茶を飲むマツバに小言を言われたが、そんなの気にするもんか。

グラスに残っていた氷も口に含む。

うん、冷たくて幸せである。


そんな小さな幸せをかみ締めていると、風に揺られて響く風鈴の音がどこからか聞こえてきた。
さんさんと降り注ぐ強い太陽光線も思い出しながら、今は夏なんだなぁ、とまた実感する。



「そういえばさ、」



氷の冷たさを堪能しながらぼーっ、としていると空を見上げてるマツバが話し掛けてきた。
つられて私も空を見る。

あ、あの雲ゴースみたい。



「今日、花火大会があるの知ってる?」

「え?………あー、」



なんか親がそんなことを言っていたような気がしない、でもない。



「ナマエは誰かと見に行くのかい?」

「……それ、私の性格わかってて聞いてるの?」



そうやって聞き返すと彼は、ちょっと聞いてみただけさ、とにこり、と微笑みながら言われた。
まったく、達の悪い幼馴染である。

言っておくが別に私は花火が嫌いなわけではない。
むしろ好きな部類に入る。

しかし、花火を見るためだけに外に行く、という行為が至極面倒なだけなのだ。
それに人混みも嫌いだし。(花火大会なんかには特にカップルもたくさんいるし)



「あーあ、マツバの家から見られればいいのになー。」

「見られるけど?」

「は?」



今、なんですと?
いつも見られないんじゃなかったっけ?



「今年は諸事情があるらしく、打ち上げ場所が変わったみたいでさ。」

「……だからここから見ることができる、と?」

「うん。そういう事だね。」



なにそれ。
嬉しすぎるんですけど。



「見てく、でしょ?」


いつの間にか麦茶を飲み終わっていたらしいマツバが、こちらを見て薄く笑いながら聞いてきた。

……なんだか尺に触る聞かれ方のような気がする。
だけど、私の答えはもう決まっていて



「そりゃ、もちろん。見て行くに決まってるじゃん!」



人混みに揉まれずに花火を堪能できるなんて、幸せすぎるぜ! !


口のなかにあった氷はもう消えていた。
あの冷たさが恋しくなって、先程よりもいくぶんか小さくなった氷の入ったグラスに手をかけながら、毎年ここで見られればいいのになぁ、とのんきにそんなことを考えた。










夏、真っ盛り!
(縁側で過ごす夏のひと時。オプションに麦茶と花火付き!!)





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