吾輩はピジョンである。
ニックネームというものはない。

どこで生れたのか詳しいことはわからない。
何でも薄暗いじめじめした所でポッポー、と鳴いていた事だけは記憶している。

吾輩はここで始めて人間というものを見た。
しかもあとで聞くとそれは“じむりーだー”という人間中で結構特殊な職業であったそうだ。
この人間というのは時々我々を捕まえて煮て食うという、かどうかは定かではない。
しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。



「今日は風が比較的穏やかだな、ピジョン。」



吾輩はその通り、という意味を込めてひと鳴き。

今日は雲もあまりなく、空を飛ぶには気持ちの良さそうな日だ。



「久々にハングライダーを使おうか。」



そう言って、吾輩を撫でる主人の手はとても気持ちがいい。


吾輩の主人は鳥ポケモンの使い手である。
といっても、今はあまり手持ちがいないが。

そして主人は吾輩たちと一緒に空を飛ぶことがある。
大空を飛び回るあの体験を、主人と分かち合えることはとても嬉しい。


吾輩たちでいう翼のようなものを用意し、それに乗る主人。

ちょうどいい風が、吹いた。

その上昇気流に身を任せて一気に空高く。
向かい風も横風もなく、あるのは弱い追い風だけだった。

主人と吾輩はゆっくりと飛んでいく。



「風が、気持ち良いな。」



そうですね、主人。

気持ちを伝えるため、力強く鳴いた。





ある程度大空を満喫した所で、オニスズメの群れを見つけた。

正直言うと、オニスズメは少し苦手である。
彼らは吾輩たちと比べて気性が荒いのだ。

気づかない振りをして通り過ぎる予定だったが、主人が嬉しそうにオニスズメの群れだ!、と言ったので、関わるしかないようだ。

主人はぐんぐんとオニスズメに近づいていく。
それを見た吾輩は、あまり良い予感はしなかった。


近づいてくる異物に、オニスズメの群れがやっと気づいたようだ。

危ないから引き返しましょうよ、と主人に伝えても



「危ないって?大丈夫さ!」



としか返ってこなかった。
オニスズメの群れは未だに行動を起こさない。



しかし、先程よりも主人がかなり近づいた時。
自体は急変した。

やつらは一斉に主人に向かって、つつきはじめたのだ!

吾輩は怒った。
返り討ちにしてやろうとしたところ、



「見ろ、ピジョン!オニスズメ達が俺と遊びたがってるぞ!!」



という嬉しそうな声が主人から聞こえた。

鳥ポケモンが大好きな主人はこの状況でも、あやつらが自分とじゃれたがってる、と考えたらしい。
どうしたらあの攻撃をそう解釈できるのか。

だが、主人が喜んでいるのは事実。
そうなってしまっては、吾輩は攻撃をするにもできない。
しかし、主人が傷つくのは見たくない。

これを打開する為の良い案はないものか。

すばやく辺りに目を凝らすと、先の草むらに人間がいるのを確認できた。
あの人に頼るしかない、とそう思った吾輩は、急いでそこまで飛んでいくのであった。










ファーストコンタクトの裏側
(彼女は主人を助けてくれて、そしてバトルも強かった。)





∵どうしてハヤトがオニスズメに襲われていたのか、ピジョン視点で書いてみた!
ちなみに。わかると思いますが、冒頭部分はあの有名な小説「吾輩は猫である」を参考にさせてもらいました^^
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -