それは前触れなんてなく、突然やってくる。



いつものように石を磨いていると、どたどた、と足音が聞こえた。
僕の横にいたココドラはその音でうたた寝から目が覚めたみたいだ。



「ダイゴさん!ダイゴさん!!」

「どうしたの、ナマエちゃん?」



足音の主は、やっぱり彼女で。
今日は珍しく息があがってるみたいだ。



「あのですね、洋服を脱いで下さい。」



え?



「あの、ごめん、よく意味が……」

「何も聞かずに脱いで下さい!あまり時間がないんです!!」



そういって彼女は僕の服に手をかけてきた。

よく意味はわからないが、とにかく剥かれるのを阻止する。

一応は男女の差というもので食い止められた。
でもまだ攻防は終わっていない。



「くっ…、ダイゴさんも往生際が悪いですね!」

「その言葉、君にそっくりそのまま返すよ。」



それに僕は脱がす方が好きなんだけどな。



「また、なんでいきなり脱げ、だなんて。」



スーツのボタンを外そうとするナマエちゃんの手を掴んで阻止しながら聞く。



「事情は話せば長くなるんです!何も聞かずに脱いでくれれば悪いようにしませんから!!」



今度は反対の手が伸びてきたが、また捕まえた。
これで彼女は僕に両手を捕まれた形になる。


・・・この行動は色々と期待してもいいのだろうか?
最近はお互い忙しくて、会える時間も少なかったし。

そのまま片手でナマエちゃんの両手を拘束し、開いた方の手で彼女の顎をくい、っと持ち上げ目線を合わせる。



「構ってほしいのなら、そういってくれればいいのに。」



にっこり、と笑って言ってみた。
みるみるナマエちゃんの顔は赤くなる。

ウブな反応をしてくれる彼女をすごく可愛なぁ、と思いながら、その感情にまかせておでこにキスを1つ。
そのまま瞼、頬、とするすると降りてゆく。



「っ、あのっ、ダイゴ、さん、」

「ん?」



もう一度瞼にゆるくキスをしながら答える。

さっきまで一緒にいたココドラは空気を読んでか、どこかに消えていた。(一体誰に似たんだろう)



「わ、私、勉強したいのですが……」

「んー。」

「明日テストなんですよ、実技の。」

「そっか。頑張ってね。」



いつもならこーゆー雰囲気に弱い彼女。

今日はなんだが特別、抗われてる気がする。



「だから、ダイゴさんに脱いでもらいたいんですってば。」

「……へ?」



あれ?
僕に構って欲しかったから、そんなことを言ったんじゃなくて?



「ちょっと聞くけど、明日は何のテストなんだい?」

「触診の実技試験なんです。」

「しょくしん…?」

「はい。知ってますか?」



僕がいいや、と答えるとナマエちゃんは詳しく説明してくれた。

聞いた話を要約すると触診とは、体の表面を触ったり押したりして、その下の骨や筋肉を触知することらしい。
そして先生に骨とか筋肉の位置を出題されるので、患者さんのその場所を触りながら答えるテスト形式とのこと。

おそらく僕で練習をしたかったのだろう。
それで、脱げ、だっかのか。



「なるほど、ね…。」



それなら頷ける。
どうやら僕は、すごい誤解をしてしまったようだ。

冷静に考えれば彼女が僕に、脱いでください、だなんて大胆なことを言うわけがなかった。
普段は大人しいから、まさかそっちからお誘いがあるとは思ってなかったし(嬉しくなかったわけではないけど)

がっくり、とうなだれる。



「で、ダイゴさん!」

「なんだい?」

「脱いでください!!!」



あなたみないな男性の細マッチョが一番いいんですから!、と言うナマエちゃん。

自分の笑い顔が引きつっていないか心配だ。










ダイゴさん大誤算
(期待してしまうのは男のさがってやつさ)





∵ちょっとだけアダルティーなダイゴさん。このくらいなら色々と大丈夫だよ、ね、・・・?そしてギャグ甘になってるよね・・・?
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