降り積もる雪を眺めながら主人公ちゃん!はカーテンを閉めた。
当然朝とはいえ、光が遮られた為に室内は暗くなり日の照射による暖かさは得られないがこれで良い。

室内はストーブで充分に暖まっているし、電気毛布も身体に巻いている。
この二重装備があれば、大丈夫。

そうしてもう何日家から出ていないのか。
だがあと数日でこの楽園からも出なくてはいけない。
1週間の休みも終わり仕事だからだ。

「冬も暖かければ良いのに」

もう幾度吐いたのか分からない台詞を呟く。
その度に友人やお節介な恋人が突っ込みを入れてくるのだ。“暖かい冬なんて冬じゃない”と。

…駄目だ、もう一眠りしよう。
主人公ちゃん!が目を瞑ろうとした瞬間、チャイムが鳴り響いた。
誰かが来たらしい。
だが、無視。俗に言う居留守を使う。
何でって…寒いから。

暫くして諦めるだろうと微睡みに入りかけた主人公ちゃん!の目は急激に醒めていった。
施錠した筈のドアノブが回り誰かが室内に入ってくる音がした。

「誰…?玲音?」

唯一合鍵を渡している友人の名を上げて呼び掛ける。
段々と不安になってきて身体を起こして部屋の入り口を見つめる。

軽い音を立ててドアが開いた。
そしてそこに立っていたのは、己の恋人トーマの姿だった。

「何で…っ鍵…!」

身構えていたせいか上手く舌が回らない。
トーマは困ったように笑うと、主人公ちゃん!に近付いてきた。
嫌な予感しかしない。

「鍵なら玲音に借りたよ。ついでに俺の分も作ってきたけど」

聞いても良いですか?
いくら恋人の家の鍵だからって勝手に増やして取得したら犯罪じゃないのって。

「いやいや、駄目でしょう!」

思わず声に出してしまった主人公ちゃん!を気にせずトーマは布団を引き剥がした。

「さ、寒い寒い寒いから!何するのよ、トーマ!」


「休みに入ってからずっと家から出てないだろ?身体に悪いし連れ出しに来たんだよ」

トーマがしれっとこちらの行動を把握していたかの様な発言をするが、主人公ちゃん!は布団を取り戻すのに必死で気付いていない。

「折角の休みなんだから身体を休めるのが普通でしょう…!」

「動かなすぎは毒。ほら起きて。それとも俺が着替えさせてあげようか?」

トーマの表情が笑みへと変わるが、主人公ちゃん!の本能が何か危険信号を発している。

「い、要らない要らない!大体何処に…!」

拒否をしながら話を逸らそうとするが、いつの間にかトーマは目の前に座り主人公ちゃん!のパジャマのボタンに手を掛けている。

「…っ!着替える、着替えるから…っ後ろ向いてて!」

「今更恥ずかしがる必要無いだろ?…見慣れてるしな」

「それでも!」

渋々後ろを向くトーマに安堵の息を洩らすと、段々と外へと追い出されつつある己の境遇を友人のせいだと恨みながら着替えを済ませる。

「…着替えた」

「じゃあじっとしてて。髪結んでやるから」

トーマが主人公ちゃん!の背後に回り髪の毛を優しく櫛で鋤き始めると、その心地好さに主人公ちゃん!はまた眠気を覚えた。

「ほら、出来た」

その声で眠りの縁から呼び戻されると鏡で髪の毛を見る。
…僕がやるよりも上手いんじゃないか?

「ありがとう、おやすみなさい」

「目的地までお姫様抱っこで連れてってあげるから寝て「行きます、自分で歩きます」

…こうして、主人公ちゃん!の辛くて長い1日が始まったのだった。

──────

似非、ぐだぐだ!落ちなし!
駄目だ…(´・ω・`)


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