龍の盾



大小の骸が散らばる大地に白銀の前髪をかきあげながらキセルに火を着け苦々しく空を仰ぐ。

彼女の敵でありその中核の三体。

大天使を名乗る者達…

ミカエル、ウリエル、ラファエルの三体は、己を見上げる老獪な龍神を蔑み、溢れる笑いを隠しもしない…

ラファエルは、全く無表情だが。

「醜い足掻きだねぇ、そう思わないかい?ウリエル?」

三体の中心、長であるミカエルがウリエルに話し掛ける。

「素直に主を差し出せばこんな目には会わずに駒の一つとして楽しく生きられたものを。」

憐れみの台詞とは逆に、ウリエルの顔は満面の笑顔だ。
「好き勝手言ってくれるのぅ、ワシの近くに来るのが恐ろしいだけの玉無しが!!」

年齢を感じさせる言葉を、若々しい肌に浮かんだ深紅の唇が白煙と共に吐き出す。

「けど御師匠さま、地平線迄奴等が埋め尽くしてますよ?」

彼女の脇に控える青年は、油断なく廻りを見回しながら彼女に話し掛ける。

「ヤバいよ、かぁちゃん!体力持たないって!!」
その双子の片割れが悲鳴の様に叫ぶ。

「ぎゃあぎゃあ喚くな、こうなるのは、知ってたはずだぞ?今更だ!」

今更だっと気合いを入れるリュウガに涙目のリュウヤ。

「二人共、ワシの弟子ならばこの期に及んで揉めるで無いわっ!」

強い語気とは裏腹にシャイナの顔は穏やかだ。

「死を恐れる理由など有るまい?ワシら龍神は人を守り導き、共に生きる者!あやつらを滅し、刺し違えたとて悔いなど無し!」

二人の小さき龍神に、一族の誇りを語り、覚悟を促しながら、古の龍神は再度敵を見据える。

「あやつらを仕留めるには、ワシの命だけでは足りん…解るな?」

先程迄、年相応のやり取りをしていた双子の目が据わる。

「無論!我等兄弟、只罪無き人々の盾になるべしっ!」


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