「…とにかく、此処からでなくちゃ」
ライラが部屋を去って数時間。
僕はなんとか回復してきた体を起こす。
部屋を見渡す限り、この部屋には窓が一切無い事に困ってしまった。
僕は使い魔だ。窓さえあれば飛ぶことも簡単なのだけれど…
正面を切って扉から行くしかないか―
扉の前まで来ると、一つ呼吸をして、その重厚な扉に触れようとする。
ス―
バチィ!
「…!?」
あと少しで触れる、と思ったところで、手が弾かれた。
「魔法がかけてある…抜かりはないよね。さすがはライラだ」
なんて冷静に言っている場合じゃない。
早く逃げなきゃライラが帰ってきてしまう。
「魔法には魔法で」
手を左から右に振り翳し、魔力を込めて魔法陣を描く。
時限爆弾式魔法陣を描いたので、すぐさまそこから退く。
数秒して。
ドォォン!
大きな爆発が起こった。
煙が晴れて、扉を見てみると、見事に扉はふっ飛ばされていた。
「良し、早く行こう」
「へぇ?どこに行くって?」
「…!!」
真横から壁にドン、と抑え込まれ冷や汗が伝う。
「随分時間がかかったなぁ、ニーナ?」
「ライラ…なんで…」
「どれくらい躾が必要か様子見てたんだよ。脱走癖のあるペットは鎖に繋ぐ必要がありそうだなぁ?」
くっくっく。
重低音のその笑い。しかし目は一つも笑っていなかった。
パチン!
ジャラ―
ライラが指を鳴らすと、首に絞めつけられるような感覚が走り、そして鎖が伸びてその先はライラが握っていた。
そのままライラは先ほどの部屋とは反対側の部屋へと歩いていく。
それと同時に鎖が引っ張られ、「ぐ、ぅ…」と思わず声が漏れた。
「ははは、ほらさっさと歩かねえと苦しい思いするのはお前だぜ?」
容赦なく引っ張られ、生理的な涙が浮かぶ。
そして部屋に入ると、ベッドに突き飛ばされ、鎖はベットヘッドへと繋がれる。
「さぁ、さっきの続きと行こうじゃねぇか」
ニタリ―
口端だけを上げて笑うその姿は、不気味なほどに、とてもシニカルだった。