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団長と電話
「あ、なんだろアレ」
地球に来た神威と阿伏兎は町を探索していた。そこで見つけたのは様々な品物が立ち並ぶ店だった。
「ふりーまーけっと?」
看板に書かれていた文字を読み上げた。道の両脇で色んな店がやっているのを見ながら歩いていた神威は、何かを思い出したようにぽんっと拳を手のひらに打った。
「そうだ、着いたら電話してって言われてたんだった。すっかり忘れてたよ」
神威はポケットから携帯を取り出すと、早速目当ての人物に電話をかける。
「あ、もしもし?うん、今着いた」
「おい、今じゃねーだろ団長」
「何?阿伏兎に代わってほしいの?やだ」
「団長」
手を差し出す阿伏兎にくるりと背中を向ける神威。
「やだもん。なんで?伝言なら俺が伝えとくよ?」
「団長、貸してくれ」
「あ、そうだ!なんかお土産買って来てって言ってたよね?言ってない?まぁいいやっ」
携帯を耳に当てたまま、神威はフリマに出されている品物を見出した。
「何もここで選ばなくていいだろ団長」
「トランプあるよ。帰ったらみんなでやろ!」
阿伏兎が呆れたような目を向けているが気にせず、トランプを手に取る。
「…もう持ってるからいい?カルタは?」
カルタもあると言われて、神威はちぇーと言って唇を尖らせた。
「ぬいぐるみいる?」
たくさんあるぬいぐるみの中から一つを手に取った。なんのぬいぐるみ?と聞かれて首を傾げる。
「これなんてキャラだっけ?」
「知らねーよ。俺に聞かないでくれ」
「エリザベスです」
「ケルベロスだって」
「団長!エリザベスだ!」
出店者の言葉を違った言葉で伝えた神威に慌てて阿伏兎が直したが、聞いていないようだ。
「…いらない?うん。…なんかねー、サンタの格好してるよ」
「団長…」
「うーん、けっこう可愛いと思う」
神威の持っているぬいぐるみを見ながら阿伏兎が「…可愛いかこれ」と呟いている。
「いらない?」
ぬいぐるみを元の位置に戻して、また別の物を見出す。
「あれ、何これ帽子?あ、ねこ耳ついてる」
帽子を広げてみれば、本物さながらのねこ耳がついていた。
「あ、もしもし?なんかいい感じの帽子あるけど」
「全然いい感じじゃねーだろ」
「うん。どんなん?だからいい感じの」
「ちゃんと説明しねーと」
「いらない?」
神威は仕方なく帽子を畳むと、元の位置に置いた。
「あ、何これ。なんか手錠とかあるけどいる?」
「やめとけ」
「買ってきたら俺にかけるって?殺しちゃうぞ」
「てかさっきから気になってたんですけどどこにいるんですか?」と聞かれた神威は「教えなーい」と軽く流した。今度はキャラ弁を作るときに使う道具セットを手に取った。
「俺に毎日お弁当作ってくれるなら買ってあげてもいいものがあるよ」
「いやいやいや」
「あはは!えー、いいじゃん。なんかキャラ弁作るやつ。…いらない?」
耳から携帯を少し離して、神威は阿伏兎のほうに目を向ける。
「どうしようすごいワガママだ」
「アンタも大概だろ」
弁当のセットを元の位置に戻した。そして今度は変なキャラクターのキーホルダーを見つけた。
「あははは、見てこれ!あいつにそっくり!」
神威の笑い声が電話越しに聞こえてくる。
「あのこっちも暇じゃないんで切っていいですか?」
「あ、待って待って!」
本気で切られそうだったのを止めて再び品物に目を向けた。
「何がいいかなぁ。やっぱこの帽子かな」
「どんだけ気に入ったんだよその帽子。絶対怒られんぞ」
「だっていいじゃんこれ」
「土産買うなら土産屋にでも行こうぜ団長」
「あ、しかもこれ10円じゃん安っ。決めた俺これにする」
「結局本人の意思関係ねーじゃん!」
そして宇宙に戻った神威は、土産としてフリマで買った10円の帽子をあげたのであった。
「…何これ。ねこ耳ついてる…」
思わず顔を引きつらせている。「ねぇねぇ、被ってよ〜」と言ってデスクに組んだ腕を載せ、ニコニコしながら見上げてくる神威を横目に帽子を広げた。
「うわ、しかもこれ10円って書いてるんですけど!」
「外しとけよ団長ォォ!!」
end
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