君が言う『好き』と、俺が君を『好き』なのとでは、意味合いが違ってくるよね。
獄寺くんに出会えて良かったと思っている。
こんなに純粋で真っ直ぐな人は見たことが無かった。
綺麗な綺麗な君に、俺はすぐに恋に落ちた。
現実ではただの友達の獄寺くんだけど、夢の中で会う君は俺の恋人で、俺だけの獄寺くんで。
それだけで満足なはずだったのに。
欲が出たんだ。
「ねえ、獄寺くん」
「はいなんでしょう、10代目」
俺が呼べば、いつでも素直に応じてくれる獄寺くん。俺だけに見せてくれる笑顔。
嫌われていない自信はあった。むしろ、好かれていると思った。
その『好き』の意味はきっと違うのだろうけど。
でも……。ねえ、獄寺くん。
俺の名前は『10代目』じゃないんだよ。
俺が君を想う半分で良いから、君に愛されたかった。
ちゃんと名前で呼ばれたかった。
「ううん、なんでもない」
「? そうですか?」
うっかり好きだと告げそうになって口ごもり、そのまま口を閉ざした。
俺の右腕になりたいと言って頑張っている獄寺くんに、俺のこの気持ちはきっと重荷だから。
獄寺くんが望むなら、俺は何だってする。
ずっと嫌で仕方がなかった『10代目』という肩書きも、その右腕として君が手に入るなら、君が側に居てくれるなら、甘んじて受けようと思った。
その重責よりも、君を手に入れられることが魅力的だったんだ。
でも、獄寺くんに危険なことなんて絶対にさせない。君は何があっても俺が守るから。
だから。
右腕になるのだと、そのことに頑張り過ぎないで。
俺は、君の安らげる場所になりたい。
俺の前では、君が休めるような。そんな存在になりたい。
君と出会えた、それだけで幸せなはずなのに。
綺麗な君が好き。
頑張る君を愛してる。
好きで好き過ぎて仕方がないんだ。
想いが、溢れてしまいそう。
ねえ、いつか。その半分でも良いから君に愛されたいと思うのは、ワガママだろうか?
「ねえ、10代目」
「うん?」
「オレ、貴方が好きですよ」
世界の色が、変わった気がした。
【END】