1~5 6~10 11~15 16~20 21~25
野中さま
きらきらグランギニョル・片目を閉じる・細やかな藍
薄紫に沈殿
無数の菊に埋もれる君を見て初めて僕はこの目から涙を流し生きることの不遇さを痛感してそして
夜汽車にエスケープ
あいしてるもだいきらいも君が為
構えよ
しんじゃえと思ってた子が死んじゃって別にどうも思わなかったけど三か月と半経ち今更じくじくと来ているこれは時限爆弾である
The embryo who sleeps / 眠れる胎児
どうせみんな僕が嫌いなんだろう
空飛ぶ南武線
皆きみの事が嫌いだったけどわたしは好きだったの
キスもハグもしないまま僕らが終わった。真夏の炎天下、アスファルトに溶けた会話、パピコを分け合った日々。
宇尾さま
小宇宙をいくらか砕いたところでそれはどうせ君のもの
ワンピースの染みを気にしているそのままで
サイアノタイプ、白い鼻筋、銀色、最終日は愉快
鼓膜をやぶいたからもう怖くないね
昼も夜も放り出したその手足
消失点は朝誰かが淹れたコーヒーの香り
パンドラの箱の蓋を閉めたら君がいなくなった
空気になる日、まず耳を塞ぎあう
換気扇の音に埋もれたら心臓が停止するのを待ちわびる
「さよならを言い合う」デー
金の皿に彼は気がつかない
ぬけがらを抱きしめて温めあったっけ
永遠なら姿を隠してしまったよ
指の先があたたかい世界に別れを告げた
佐々木さま
ベル・エポック
どくどく脈打つ鼓動の止め方はまだ知らない
聲までも奪われてなるものか
光合成と呼吸
こんなに広い宇宙でも、もう私たちの居場所はないの
しずかに震えた鱗粉を献上
あの子の涙は真珠だった
胎児のノスタルヂア
おやすみ、グロリアーナ
青い星が死んだ日
9さま
呼吸する夜明け
目覚めるラシーヌの葬演
羽化する僕たちに透明の世界論を告げる
綺麗事を纏う君にくちづけを
羊のパレードでおやすみ
青に包まれて眠る
エンドロールに謳う蝶
E子さま
裏拍を踏んで歩いては、君は顎で前を指す。そういえば、君を助けたことはあっただろうか。安心のブルーに染まり、後ろで組まれた手は約束の小指を結んでいた。何かひとつ忘れている気がする。もしかしたらふたつだったかもしれない。
少年の空を見上げるには寒いくらいにいい青だ
首のないタンポポの綿毛が飛んだ
日記の裏の虹は七色をもたない
笑顔で生まれた少女のエンドロール
手袋の糸を拾いあげて
くつとばしどこまでも、あの子が見付けられないところまで
そうだ、世界はこんなにもハジマリで満ちていた
僕は虫の泣き声を聴こう
塞がらなかったリコーダーが宙を舞う
空は青く鳥は白い、やはり涙はグレーに飛んだ