今日の三時間目の授業は、移動教室での生物。

選択制なので、他のクラスの生徒とも同室で授業を受ける。

クジ引きで運良く勝ち取った窓際の一番後ろの席の隣には、隣のクラスのみょうじさんが座っている。



「浅羽くん、宿題やってきた?」

「うん、やってきたよ。」

「え!やったの!?偉いね!?」

「まぁ一応宿題ですからね…。そういうみょうじさんは?」

「あー、えっとー…、すみません、見せてください…。」

「…はい、どうぞ。」



ふわりとゆるく巻かれた 薄茶色の長い髪。
第二ボタンまで開かれたブラウス。やたら短いスカート。

一見派手で目立つ彼女だが、数回授業を重ね仲良くなって気付いたことがある。

それは、見かけによらない一面も持ち合わせているということ。



「…よし!書き終わった!ありがとう!」

「どういたしまして。」

「それじゃあ私ちょっと寝るからさ、なんか順番回ってきそうになったら、起こしてもらってもいい?」

「え、もう授業始まると思うけど…。」

「昨日バイト終わるの遅くてもう眠くて眠くて。それに、生物って聞いててもよく分かんなくて、ちょっと苦手なんだよね〜。」

「苦手なのによく選択したね。ほかにも日本史とか古文とかいろいろあったでしょ?」

「あーそれはね、浅羽くんが生物の授業選んだって友達から聞いたから!」

「 え っ 」

「え?」



いや、え?じゃなくてですね。さらっとと何言っちゃってるのこの子。


「私ずっと浅羽くんと仲良くなりたかったんだけど、三年目でも同じクラスになれなかったから、せめて選択授業でくらい一緒になれたらいいなーと思って!」

「あぁ、なるほど……?」


や、俺も「なるほど」じゃなくて。何も納得できてないんですが。

彼女さりげない感じで話してるけど、これけっこうすごいこと言ってない?



「ふわぁぁ…。そろそろ寝るね…。」

「あ、はい、おやすみなさい…」

「んーおやすみー…」



とろんとした眠たそうな声で俺にそう告げると、彼女はペンケースやハンカチを枕代わりに配置し、机に突っ伏して本格的に寝る体勢へと入った。


女子に面と向かってあんなこと言われたのは初めてだ。
先ほどの発言が何度も脳内再生され、徐々に顔が赤面していくのが自分でも分かった。


当の彼女をちらりと横目で見てみると、俺に聞こえるくらいの音で寝息をたてていた。

いや寝付くの早っ。ここ一応教室ですよみょうじさん。

そして、俺の方へ顔を向けて眠っている。
他人に寝顔見られるのって恥ずかしくて嫌だと思うけど、彼女はそんなこと気にならないらしい。

おかげで寝顔が丸見えなので、せっかくだし少し見ておくことにした。



鈍感というか、大胆というか、無自覚というか、なんていうか…



かわいい。


彼女の愛らしい寝顔を遠慮なく見られるのは、こうして隣の席にいる俺だけの特権でもあり、この授業の時間のささやかな楽しみでもあるのだった。





‐特権‐


自分のクラスではその寝顔、さらさないでほしいな。とか思ったり…。






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記念すべき(?)初めて書いた君僕夢です。
授業中寝てる人の顔って見ちゃいますよね!ね!



▽感想など頂けたら幸いです(´///`)
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▼2023/8/19 加筆修正
今読むと、なまえちゃん、悠太くんと仲良くなりたかったのに即寝てるやないかーい!などツッコミどころが満載でなんとも恥ずかしいのですが、ピュアでまっすぐななまえちゃんに翻弄される悠太くんを書きたかった10年前のわたくしと無事、尊さをシンクロさせることができました。ありがとうございました。(?)




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