「あっ、浅羽先輩がいるよ!」

「ほんとだ!今日もかっこいいなぁ〜」

「ねえ、彼女っているのかな?」

「えー?いたらめっちゃショックー!」


気まぐれであたりに耳を澄ましてみると、聞こえてくるのはいつもこんな言葉ばかり。
幸か不幸か、この悪目立ちにももう慣れてしまった。
逐一気にしてしまうとそれはもう疲れるから、いつしか俺は自然と周りの言葉や視線が気にならなくなっていた。


「ヒュー。ちょーっと二年の廊下通っただけでこれかよー…。まったく、モテ男も大変だねえ、ゆっきー?」

「大変って思ってるならさ、俺を透明人間にするとかなんとかしてよ。」

「俺にそんなパワーあったら、とっくに俺モテモテになってるっつーの!」


気にならなくなったとはいえ、目には入るし聞こえはする。お世辞にも居心地がいいとは言えない。

そりゃ言えるのなら、見ないで、と言いたい。


「ねえ、なまえ、浅羽先輩がいるよ!」

「…んー?なにー?」

「だから、あの浅羽先輩がいるんだって!」


俺がもし自意識過剰なのだとしたら、そう信じたい。でも俺の耳と目はまだ衰えてないしむしろ今が一番ちゃんと機能する年頃であるはずだ。






「浅羽ってだれ?」


男子ならまだしも、女子の声でそう聞こえ、気に留まる。


「え!浅羽先輩知らないの!?三年の超イケメンの双子の先輩!」

「へぇ…」

「うっわ興味無さそ…ってほら!こっち来るからよく見ておきなって!」


友達にそう言われても、彼女は窓の外を眺めたまま動こうとしない。


「なまえってばー!」


横でそうしつこく煽られても、気にせず外の景色を見ている。
窓の外によっぽど彼女の気を惹く何かがあるのだろうか。



「…え、ちょ、ゆっきー?」


すると俺の足は、依然背を向けたままの彼女の方へと向かっていた。


「わぁー!浅羽先輩こっち来てるよ!ねぇ、ほら!」

「だから浅羽先輩って誰…」


清々しいくらいの俺への無関心に、口元がゆるむ。


そして彼女の白い腕を掴んだ。



「俺が浅羽です」



「……はい?」





- Which was caught? -

捕まったのは、どっちだろう?






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今ハマッている某少女漫画からちょいとアイデアを拝借して書き上げました。

若干ゆうきくんのキャラがブレてますが、あなた様の寛大な心で処理していただけると幸いです...!




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