「そろそろ帰るか」

「うん、そうだね」


左腕に付いている腕時計に目をやると、時刻は18時を過ぎたところだった。

休みの日に二人で買い物に行こうなんて誘いは、もちろんダメ元だった。
なのに、何の魔が差したのか。それとも、珍しく謙虚にお誘いを申し出てみた私を真に受けたのか。あっさり承諾してくれたのだ。

眉間にシワを寄せて「さっみぃ」なんて呟いている彼を横目に、さすがにもう次はこんなこと無いだろうなぁと呆れて頬が緩む。


「ねぇ要」

「ん」

「今日、何で断らなかったの。」

「…別に理由なんてねえよ。」

「気分?」

「…まぁな」

「ふーん」



ああ、これは真に受けたに違いないな。

自分でも呆れるくらいに可愛げの無い私の、滅多に無い健気な姿にギャップとやらを感じたのだろうか。

それを今すぐ本人に確かめるのもそれはそれで愉快だけど、この彼は眺めているだけで真意が見えてくるのだ。そういうところが、堪らなく可愛い。


「…なまえ」

「ん?どうかした?」


駅へ続く通りを歩いていると、急に彼の爪先がぴたりと止まった。
それにつられるように私も足を止め、何事かと彼の顔を伺う。


「…あの向こうから来るの、クラスの奴ら…じゃね?」


私の耳元にあからさまに嫌そうな小声が届いた。
彼の視線の先にはその言葉通り、私にも見覚えのある顔が四つ。


「あ、ほんとだ。よく見つけたね。」

「あれ、こっち来るよな。うわマジかよ…。」


そう言うからに、鉢合わせは避けたいのだろう。

そもそも私たちが彼氏彼女なのを知ってるのは要の幼馴染みーズと私の友達くらいのはずだから、向こうから来る彼らと顔合わせしたらまず初めに冷やかし攻撃を受けるだろう。主に要が。



「とりあえずどっか隠れねえと!」

「え、隠れるって…ちょっ!」


どこにと聞く前に、華奢ななりに似つかない強い腕の力が私を引き寄せた。

それに体を預けるようによろめきながらもついていくと、細い裏路地に二人で入り込んでいた。


「…なにもここまでしなくても…。」

「うっせー。嫌なんだよ、顔合わせんの。」


少しはこっち見てよって言いたくなるくらい、食い入るように大通りの方を監視している。そんなに嫌なのか。


「…ねぇ要」

「あ?」


ちょっと要さん。返事するなら顔もこっち向けてください。



「塚原要くん!」

「なんだよ!」


やっとこっち見た。

焦った表情が抜けないままのその顔がいつもより可愛さを引き立て、思わず見とれそうになる。


「んだよ、どうした…」


その、用が無いなら黙っててと言いたげなその口ぶりが、幸か不幸か私の遊び心をかき立ててしまった。



「私と友達、どっちが大事なの?」

「はぁ!?お前、なに言って...」


少しの慈悲が浮かんだと同時に、背伸びをして彼の唇に自分の唇を押し当てた。


目を瞑ってても、彼がどんな表情をしてるのか分かる。
きっと思いっ切り目を見開いて唖然としてるに違いない。


わざと音を立てて唇を離すと、思い描いていた通りの顔が目の前にあった。

まだざわめいている遊び心で、上目づかいで笑ってみせる。


「おま、なにして…!」

「あ、今クラスの人達通り過ぎたよ?」

「えっ、おい、見られて…ないよな?」

「ふふ!目合っちゃった!」

「はぁ!?」

「うそだよー」




‐全ては‐

君の反応が見たいからっ






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はい、小悪魔な女の子が大好きです。こういう子だと要くんの可愛さが際立ってすっごく興奮します└( ^ω^ )」ヒェア



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