小説 | ナノ


▼ 消えない熱

「オトナのプリン、プレミアム&ビター……ア〜ンしてみろよ?」
「カット!!はいっ!OKですっ!」
「伊達さんお疲れ様ですー!」
「お疲れ様です。」
「残ったプリン持って帰ります?」
「いや、お気持ちだけありがたく受け取っておきま〜す。それじゃ俺はこれで…」
「はい、お疲れ様でした!」

京也はお得意のアイドルスマイルでAD達に挨拶をしてスタジオをでる

「はぁ〜甘ぇ…」

甘さを抑えているビタープリンと言えど甘い事には変わりない…
甘い物があまり好きではない京也にとっては辛い収録だった

「口直しが必要だな…」

帰りにあの店でたこ焼きでも食べるかななどと考えながら京也は楽屋に戻る

-ガチャ

「終わったのか?」
「剣人…おまえ帰ってなかったのか…」

ドアを開けると剣人が雑誌を読みながら椅子に座っている
剣人、透は先に撮影は終わり先に楽屋へと戻っていた
京也は二人とも帰ったものだと思っていたので剣人が居ることに驚いた

「ああ、寝てた。さっき起きた。」
「そうか…透は?」
「あの店寄って辛いモノ食って帰る。」
「あー、だろうな。透は甘いモノ大嫌いだからな〜よく頑張ったよ今日は… !はぁ〜口の中が甘くて気持ちわりぃな。」
「口直しするか?」
「お?ガムかなんかあるのか?くれくれ」

剣人の前に立ち口を開ける

「はい、あーん。」
「……」

−グッ!

「んっ!?」

京也は腕を掴まれ剣人の方へと引き寄せられる

−チュッ

そして、ガムの代わりに唇に触れたのは 剣人の唇だった

「んんっ…!」

驚き離れようと抵抗するが 後ろ頭を剣人の大きい手で掴まれ逃げることができない
角度を変え何度も唇を奪われる

「はっ…ん…」

開いた唇に剣人の舌が差し込まれ
その舌は歯列をなぞった後 京也の舌に絡みつく クチュクチュと楽屋に舌の絡み合う音が聞こえる 舌に吸い付いたと思うと離され上顎をなぞられた

「ん…ッ!」

その感触に京也の体がビクつく

「はっ…んん…っ」

剣人のキスに感じ立てなくなったのか京也は剣人の方へ凭れかかる

「京也…」

唇が離れ京也は潤んだ瞳で剣人を睨みつけた

「剣人…おま…え…」
「っ…!京也…そんな目で見んなっ…」
「はぁ…?うわっ!?」

剣人は京也を突き放すと立ち上がった

「剣人?」
「………だっ。」
「は?聞こえねぇ。」
「口直しだ…。」
「あっ…。」

甘いものを食べた後の口直し…
それはキス…
京也は剣人とのキスを思い出し唇を指でなぞる

「そんな顔すんな…喰っちまうぞ…」

剣人の欲を孕んだ目が京也を見つめる

「っ…!」
「クッ…冗談だ…。じゃあな、先に帰る」
「あ…あぁ…。」

そういうと剣人は京也の方へ振り向くことなく楽屋をでた

「なんなんだ…いったい…はぁ…」

京也は椅子に崩れ落ち 天井を見つめる

「なに…が…冗談だ…畜生…」

(どう見てもあの目は本気だろ…)

あの目とキスを思い出し京也の下半身が熱くなる

「チッ…俺は中学生か…」

ただ、好きな男とキスしただけ それだけなのに硬くなっている下半身を睨みつける
京也は剣人に惹かれていた 
逞しい身体、仕事の時に見せる野獣のような目、自分たちだけに見せる時のあどけない笑顔
一緒に居ればいるほど不破 剣人という男に惹かれていった
そして、気づいてしまった…
彼も自分を少なからず好いてくれている事を…

ただ、今はデビューし顔も売れてきた頃 今が一番忙しい時期 そんな時に恋愛にかまけている時間はない
そう思い剣人に気持ちを伝えられずにいた たぶん剣人もそんな京也の考えに気づいているのだろう
剣人からもこれといったアプローチもなく普通に過ごし接しあっていた今日までは…

「もう…限界か…?俺も…剣人も…」
 
京也は、チッと舌打ちをした後 ロッカーからタオルを取り出しシャワールームへと姿を消す
剣人と触れた事によって大きく熱くなっていく想いを冷ます為に

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