▽ 性春2
「何処行くんすか〜?ミーナコちゃーん。」
「うるさいな〜、何回言ったらわかんの?黙ってついて来い!」
「へーい。」
ふぅ…
黙ってついて来いって言うけど もう結構な距離歩いてるし?
まぁ、海沿いだから景色には退屈しねーけど
いったい、何処に連れてかれるんだか?
早足で前を歩くミナコさんの背中を見つめながら歩いた
それから、暫く歩いていくと右側に寂れた喫茶店?みたいな所が見えた
ふーん、こんな所にこんなのあったんだ?
見た目は寂れてるけど 雰囲気的には90年代風で結構格好いいじゃん
「着いた!」
「へ?」
俺が見とれていた店の前でミナコさんは止まり手慣れた感じでドアを開け叫ぶ
「おーい!二人ともいるー??」
「へ?いる?」
ってか此処 誰か住んでるわけ?
まさか−
「あぁ?何だ?うるせぇのが来たな。」
「なになに?いるよ?」
中に入ると上から二つの声と、トントンという足音が聞こえた
「あんた達に会いたいって子連れて来た。」
「はぁ?」
「へぇ…可愛い子?」
階段から降りてきたのは
「わっ!」
ほ、本物の桜井兄弟!
マジやべぇ…
学校で何度か見たことはあるけど
こんなに間近で見たことはなかったし
何より 二人の視線が俺に向けられてる…
やっぱ、なんか迫力ある
「はぁ?何だそいつは?」
「何?男?喧嘩したいの?」
二人の目つきが怖い…
「バーカ、違うよ。前、言ってたあたしをナンパした後輩くん。んで、あたしの彼氏の可愛い後輩くんでもある新名旬平くんです!」
「あぁ、あのお前をナンパしたとかいう物好きか。」
「可愛い…ねぇ。ふーん。」
二人の目つきが柔らかくはなった気はするけど、それでも二人に見られるのは緊張する。
「そう!その後輩があんた達と話してみたいだって!つー事で宜しく!あたしは帰る!」
『はぁ??』
男3人の声が揃う
「な!ミ、ミナコさん!俺一人でどーしろって!」
「知らん。ニーナが話したいって言うから連れて来たんだよ?後は自分で何とかしなさいよ!」
「マジ?ひ、ひでぇ。。」
「ミナコの後輩って事が不憫だね…コウ」
「ああ、全くだ…」
「うるさい!あっ、もうこんな時間!コウ!家まで送って!あたしこの後デートなの!」
「はぁ?テメーふざけんなよ。」
「月曜日、A定奢る」
「よし、ノッタ。行くぞ。」
「マジ、帰るんすかミナコさん!んぢゃ、俺も…」
こんな所、一人なんて無理!俺、二人の顔 直視できねーし!
帰ろうと入口に向かって歩いてたら思いがけない言葉がかけられた
「まぁさ、いいじゃん。せっかく来たんだし?ゆっくりしていけば?」
「へ?」
振り返って桜井弟の方を見るけど 弟は別に笑顔でもなくて だからって怒ってる風でもない
微妙な感じ…
そりゃ、話したかったの確かだけど…
ミナコさんいないのにどうやって会話の糸口を見つけりゃいいのさ?
「まぁ、そーだな。俺がこいつ送って行く間 そいつの相手でもしててくれや?オラ、行くぞ。」
「押忍、んぢゃね!ニーナ☆ごゆっくり☆」
「あ…、はぁ、押忍。」
ミナコさんは俺にウィンクをしながら出て行った…何だよそれ。
「いってらっしゃーい」
パタンッ−
二人が出て行った部屋は凄く静か…
あーどーしよ。。この沈黙…
チラッと弟を見るけど視線は入口に向けられたまま…
気になるなら行けばよかったのに、何で俺なんかを呼び止めたわけ?
はぁ…マジ…これからどうすれば…
「なぁ、おまえ腹減った?」
「へ?」
途方に暮れてる俺に気づいたのか弟が腹減ってないか尋ねてきた
まぁ、部活帰りだし?腹は減ってる
「減ってます…けど?」
何?何かご馳走してくれんのか?
「そっ、じゃホットケーキ作るから待ってろ」
「は?ホットケーキ?」
「そっ、ホットケーキ。上手いよ?俺」
「は、はぁ。」
エプロンを着けながら自慢げに言う弟…
ホットケーキ作るのに上手いも下手もあるのか?
まぁ、腹減ってるし…
食べないよりはマシなんじゃね?と思う事にした
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