短編 | ナノ

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―もし…聖戦を生きぬく事ができたなら…
           その時は共に生きよう



薔薇の園の中で交わした誓い




「アルバフィカ………」
「なまえ……彼は………」
「シオン…何も言わなくても…わかってる。彼らしい死に方だったんでしょう?」
「ああ………見事だった。」




―彼は冥闘士との激闘の末死んだ




「ハーデスっ!エリシオンにお帰りなさいっ!!」


激しい戦いを経てたくさんの犠牲をだしながらもあたし達はハーデスを封じる事に成功した。


そして、あたしはまた…聖域に戻ってきた


「なまえっ!なまえではないかっ!?」
「童虎…シオン……」
「よくぞ無事で!!アテナ様やテンマ、アーロンは!?」
「…………」
「そうか………やはり………」
「うん……」
「しかしっ!おぬしだけでも無事でよかった!しかし、だいぶ弱っておる!早く手当てを…!」
「ううん………いい。」

そう言いながら二人の横を通り過ぎる

「なまえ!?待つのじゃっ!おぬし何処へ行く気じゃ!?いくら女神でもその傷ではっ…!」
「なまえ……もしかして…双魚宮へ……」
「駄目じゃっ!いまのおぬしの小宇宙ではあの園に入ると危ないっ!やめるのじゃ!」

童虎が肩を掴む…あたしはその手を優しく押し返す

「あたし…もう、どっちにしろ長く…ないんだ。」
「そんな!?なまえ!」
「此処に戻る為に…無理しちゃったみたいでさ。だから………ね?童虎もシオンもアテナの言う通り………頼むよ?」
「なまえ……。」
「それじゃ……ね…」


二人に見送られながら薔薇園を目指す


「さらばじゃ……」
「なまえ…また次代で…」




「はぁっ………!ただいま…アルバフィカ……」


彼がいつも立っていた場所に立つ
聖戦を生きぬく事ができたら共に生きよう…
そう誓いあった場所に……

けど、終わって此処に立っているのはあたし一人…

お互い…死ぬ覚悟はできていた。
けれど……もし…もしっ…二人一緒に生きぬく事ができたなら…そう思う自分もいた。

頬に暖かい何かがこぼれ落ちる
それは、彼が死んでから初めて流した涙


「くっ…!?……はぁ…はぁ…」


薔薇の香気のせいか…流した涙のせいか…
視界が霞む


「あたしも……そろそろかな…?」


最期は貴方が育てた薔薇の中で死ねるなら本望だ

アフロディーテの女神として何度も何度も転生し繰り返したこの命……

アルバフィカ………
貴方と過ごした命が一番幸せだった………





また…また…生まれ変わっても…必ず貴方の元へ………




『今度こそ………共に………生きよう……… 』