2016露伴の日 | ナノ
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▽2016/06/08(Wed)another bandage


※※9話以降のもしも話。※※

!attention!

露伴の日なので、仗助話は今日はお休み。
連載8話から続く露伴ルートです。もしも話ですが、よろしければどうぞ!


*****


私が、決めなくちゃいけない。
誰かに助けてもらうのでも、強制されるのでもなく。

*****

「仗助くんは優しいし、きっと他にもっと素敵な人がいるよ。…でも露伴先生には、私がいてあげないと…」

どうしたって、放ってなんておけなかった。私にどれだけ酷いことをしても、一番辛そうなのは先生だったから。

仗助くんは、ひどく戸惑ったような声音で、どうして、と呟いた。本当は、会って話さなきゃいけないんだけど、ズルい私は、優しい仗助くんの顔を見て断りを告げるのがあんまりに辛くって電話を掛けた。

「…ごめんなさい、仗助くん…」

涙交じりの私の謝罪は、とてもズルいのかもしれない。けれども仗助くんは、最後まで優しくて。

「…アンタが決めたんなら、それは俺が口出すことじゃあないっスけど、…また泣かされるようなことがあれば、そん時は俺、容赦しませんから。」

アンタも、露伴も。
そう言って、電話はぷつりと切れた。
ごめんなさい、と呟いた声は、きっと彼には届かない。

*****

ぴんぽん、と、大きな扉のインターホンを鳴らす。ドアを開けた先生は、私がいると知るととても驚いた様子で、玄関から転がり出てきた。

「…ど、うして…」

「…先生、私…、あの、ッ…」

なんと言っていいか分からずにオロオロする私を見つめて、先生は優しく「…入れよ」と告げる。促されるままに前に出した足は、少しだけ震えていた。

「今からでも、やり直してくれるか…?」

玄関先で、まるで騎士が主人をエスコートするかのように手を取って、先生は言う。

「…せんせ、そんなに優しくされたら、私…勘違いしちゃう…」

私はどうして、ここに来たのか。分かっているはずで、きちんと決めたはずなのに、いざ先生を目の前にすると、胸が苦しくて何も言えなくなってしまう。この後に及んで、嫌われたくないなんて、私はなんてズルいんだろうか。

「好きなだけしろよ。…勘違いじゃないんだからな。」

先生は私をぎゅうと抱きしめた。脱ぎ掛けの靴が、玄関に転がる。そのまま引き摺られるように、大きなベッドに転がされた。

「仗助に抱かれたのか?…ぼくのことが好きだって、その舌の根も乾かないうちに。」

仰向けに転がった私の上に、露伴先生がのしかかる。真剣な瞳で見つめられて、逃げ場がない。竦む体を鼓舞して、なんとか言葉を紡ぐ。

「…せんせ、ごめんなさ…」

「…はっ、とんだ淫乱だな。…君を好きだなんて、ぼくは…本当にどうかしてる…」

そう言う露伴先生は、辛そうに唇を歪めて笑った。そうして、本当にどうかしてる、と小さくもう一度。

「…先生…」

ゆっくりと、胸元に額を擦り付けるように項垂れた先生は、まるで懺悔するかのように呟いた。

「…どうか、してたんだ…ぼくは…」

露伴先生の髪の香りが鼻腔をくすぐる。シャンプーと、幾許かのインクの匂い。

「…露伴先生…」

そっと髪を撫でると、先生はゆっくりと顔を上げた。そうして私の瞳の奥底を覗くように見つめ、唇を開く。

「…好きなんだ…。君が、好きだ…」

切実な響きが、鼓膜を揺らす。
こんな姿の先生は初めて見るけれど、その瞳は変わらない。
そっと首筋に腕を回して引き寄せる。そうして形の良い耳に小さく囁きかけた。

「…私も、好きです…ッん…ぅ…っ!」

私の言葉を飲み込むように唇が重ねられる。柔らかな舌が、こちらを伺うようにそっと差し出される。薄く唇を開けると、遠慮がちに舌が差し込まれた。私の反応を伺うように探っていく、露伴先生じゃあないみたいなキス。

「…好きだ、」

唇が離れる度に譫言のように囁かれる言葉。
狂おしいほど切なげな瞳に、胸が締め付けられる。

「…露伴先生…」

「…許してくれなんて言わないから、…ここにいて、償わせてくれ…」

ぎゅう、と抱き締める腕を、そっと抱き返す。

「…そんなことしなくても、ここにいます。」

先生の、そばにいますから。
柔らかな髪をそっと撫でると、露伴先生は尚も強く私の身体を抱き締めた。