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自業自得の男

年下夢主に撫でられるギアッチョ




「テメェみてーなガキによォ〜、心配されたかねーんだよォ〜」
「……そう言われても……、私はリーダーから頼まれて……」
何度目かわからないやりとりに、げんなりと溜息をつく。なんて面倒な人だ。
怪我人が出たから手当てに来てくれ、とリゾットに呼ばれて来たのはいいけど、当の怪我人はギャンギャンとうるさいばかりで一向に手当てできない。見るからに傷だらけだから、この人が怪我人で、リゾットが言ってた『ギアッチョ』って人に間違いないと思うんだけど。
「だからなんでオレがテメェみてーなガキに……敬意っつーもんがねーだろーがよォー」
ガキだガキだと言うけど、見る限り年齢差なんてあってもたかだか数年だ。何が気に入らないんだろうかとまた溜息をつき、精一杯慇懃に答えた。敬意、っていうのはこういうことでいいんだろうか。
「……ギアッチョ……さん、は……怪我していらっしゃるので、……手当て、を……」
「クソッ、言葉遣いの問題じゃあねーんだよォー、「さん」っつーのも気に食わねーし、嫌々へりくだるテメェの態度もよォー、気に食わねーんだよなァー」
あぁもう人が下手に出てみれば! 怒りたいのはこっちだと思ったけれど、ここで波風を立てるのもめんどくさいとぎゅっと唇を噛む。
「……気に入れば、……手当てしていいんですか? なら、仕方ないですね……」
別に危害を与えるつもりはないけど、できるならスタンドなんて使いたくなかったな、と思いながら、手のひらを開く。そのままひらひらと振るのを合図に、無数のスタンドが辺りを舞う。
「……テメェ、スタンド使いか……ッ」
驚いたギアッチョは慌てて自分のスタンドを発現させた。けれど私のスタンドは無数の蝶で、なおかつ効果を発動させるのはその羽の鱗粉だから、いくら彼が強いとはいえ、全てを氷に、とはいかない。まぁ半分くらいは凍ってしまったから私のスタンドの方も完璧に、とはいかなかったけど、きっちり発動はしたみたいだった。
「……さて、これで手当てさせてもらえますね?」
「……何の、……スタンドだ……」
私が問い掛ければ、ギアッチョは己の身体を腕で抱き込むようにしながら睨みつけた。
睨むってことは、あんまり良く効かなかったのかな、と思いながら、私は自分のスタンドについて説明する。
「別にたいしたものではないです。私のスタンドは、『WITHIN TEMPTATION』……言葉のままの意味ですね、「誘惑」って」
クソッ、などと呟きながら唇を噛むギアッチョの瞳を覗き込む。逸らされない視線にやんわりと笑えば、目の前の頬が朱に染まる。
「……結構……わかりやすいんですね、」
さっきまで散々騒いでいたのが嘘みたいだと思いつつ、その変わった巻き毛を撫でた。
「……クソッ、」
「毒付けるってことは……あんまり上手くかからなかったんでしょうね。……ちゃんとかかれば、効果が切れたら覚えてないのに」
覚えてない状態で私にメロメロになるのと、中途半端に誘惑されてきっちり覚えているのでは、果たしてどっちが嫌なんだろう、なんて意地悪な笑みを浮かべつつ、ギアッチョを手当てしていく。不本意だ、と言わんばかりに時折顔を背けるのはスタンドの効果が薄いってことだらうけど、特に抵抗されることもなくなんだかんだで彼は素直に手当てさせてくれた。
「……はい、おしまい」
私がそう言うと彼は心底安堵したみたいに溜息を吐いた。それがなんだか癪に触ったので、仕返ししておくことにする。
「……ねぇギアッチョさん、おいで」
「……ッ、テメェ……」
ぎり、と音がしそうなくらい唇を噛んではいるけど、抗えないらしい彼は大人しく私の腕に収まった。よしよし、と髪を撫でてから「はいおしまい」と身体を話す。
「……クソッ、なんだよテメェは……」
「……散々面倒掛けてくれましたし、嫌がらせです」
ニッコリと笑えば、血管が切れそうな顔で睨みつけられた。まぁ、スタンドが効いてるし全然怖くないけど。
そもそもこうなったのは大人しく手当てさせてくれないからだ。自業自得だ。うん。

そうこうしているうちにドタドタと足音が聞こえ、 見慣れたブロンドが戻ってきた。私は思わず彼に駆け寄る。
「あ、メローネー!」
「ciao、ななこ!」
なぁに、遊びに来たの? なんて呑気に笑うメローネは、怪我なんて全然してなかった。組んでいたのはメローネじゃなかったかしら、なんて思いながら「お疲れ様、」と声を掛ける。
「テメェ随分態度が違うじゃあねーか……」
私が離れたことでスタンドの効果が切れたのか、最初に会った時みたいな怖い顔のギアッチョが吐き捨てるみたいに言った。
「え? だってギアッチョさんがそう言ったんじゃあないですか」
「そうだよギアッチョ。自業自得だよ」
あぁメローネ、アンタの『よくわかんないけど面白そうだし乗っておけ』みたいなとこ好きよ、なんて思う。ステキな援護射撃をもらった私は、大袈裟に溜息をついてみせる。
「ね、メローネ? この人めんどくさい」
私の言葉を受けたメローネは、芝居掛かったジェスチャーをしながら大きく同意を表した。
「そうなんだ! わかってくれるかいななこ、ギアッチョはディ・モールト面倒な男なんだよ!」
二人手を取り合ってまるでホームコメディのようにギアッチョの面倒くささを分かち合っていると、流石にというか当然というか、ギアッチョはキレた。
「テメェら黙れええええ!!」


……なんていうかまぁ、自業自得よね。

20180721


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm