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sit down,please

花京院と承太郎の仲の良さを見て、夢主が承太郎に嫉妬する話




言い知れぬ不安感で胸がざわつく時がある。例えば、友達が他の子と仲良くしている時とか、私の挨拶に気付いてもらえなかった時とか。
別に他意がないのはわかっているし、実際そうなんだろう。けれど、いくら自分に言い聞かせてみたって、胸はざわざわとうるさい。みんなは(よほどでなければ)そんなことはないらしいと、友人に教えられた時はひどく驚いた。

「もうちょっと自信持ってもいいんじゃない?」

そう慰められたけれど、持てと言われて持てる自信なんてないわけで。「あの花京院くんと付き合ってるってだけで、私なら自信満々だけどね」なんてからかわれた。

「あの」と揶揄されるくらいに花京院くんは有名だ。ファンも多いし、かくいう私もその一人だった。なにがどうして花京院が私を選んでくれたのかはわからないけど、恋人というポジションに置かせてもらっている。

「……でもさぁ、」

花京院くんは私よりも空条くんの方が好きだと思うんだよね、と溜息をつけば、友人は思わず吹き出して「自信がないにもほどがあるでしょ」と笑った。そう言われても、花京院くんは空条くんといる時の方が楽しそうだし、そもそも私なんかが花京院くんに見初められた理由がわからない。
そう溜息をついた矢先に予鈴が鳴って「アンタそれ、花京院くんに失礼じゃないの?」などと言い残し、友人は自席に戻っていった。

まぁそりゃあ失礼だと言われればそれもわかるんだけど、それだけで折り合いが付けられるならそもそも誰も嫉妬したりしないと思う。授業中だっていうのにいろんなことが頭を悩ませる。もちろんそのほとんどは、花京院くんのこと。

「……ななこ、一緒に帰ろう」

放課後になると花京院くんが来てくれた。カバンを持って立ち上がり、彼の待つドアのところに向かう。花京院くんはひとりで、いつも一緒にいる空条くんの姿はなかった。

「……空条くんは?」

「えっ?」

私の言葉に驚いた花京院くんは、「承太郎ならもう帰ったけど」と戸惑いはそのままに言葉を返す。そっか、と私が安堵の溜息をつくと、彼は何を勘違いしたのか、「もしかして、承太郎が一緒の方が良かった?」と困ったように言った。

「……ううん、そうじゃないけど」

「……けど、なに?」

困り顔の花京院くんはそう問いかけたけれど、まさか空条くんにヤキモチを妬いていますなんて言えるはずもなくて、なんでもないよ、と笑ってみせた。

「……あの、もしかして……ななこは僕よりも承太郎の方が、良かったりしますか……?」

「え、?」

花京院くんがおそるおそると言った様子で発した言葉に、思わず間抜けな声が出た。それは、……それは、どう考えたってわたしのセリフだ。

「それ、そのまま花京院くんに返したいんだけど」

頬を膨らませながらそう返せば、花京院くんは目をぱちくりさせて、なに言ってるんだみたいな顔で私を見た。

「……花京院くんの方こそ、私より空条くんの方が仲良しじゃあない」

「なっ、……そんな、なんで」

恋人と友人を同列にしてどうするんです、と花京院くんは困ったように言った。そんなこと言われたって、私だって空条くんみたいに花京院くんと仲良くしたい。

「だって、花京院くんは空条くんには敬語使わないし、」

「それは……なんというか、気恥ずかしくて」

花京院くんは曖昧な笑みを浮かべて私を見つめた。気まずいような嬉しいような表情で、私に向かって言葉を落とす。

「でも、それって……ななこはもしかして、ヤキモチを妬いてくれてるって、こと、」

……だよね? と、瞳を覗き込むように言われて、頬が熱くなる。肯定の言葉を返すのは恥ずかしくて顔を背けたら、「答えてよ」なんてわずかに強い語気が飛んできた。

「……そう、だよ」

わたしだって、もっと花京院くんと仲良くしたいもん……なんて、子供のわがままみたいなセリフを吐けば、花京院くんは幸せそうに頬を緩めて、赤い頬を誤魔化すみたいに大きな溜息をついた。

「……まったく君は」

僕は承太郎とはぜっったいこんなことしないからね、と言いながら、彼はわたしの手を取った。私の手をぎゅうと握る花京院くんは、唇を一文字に引き結んで、決意を固めたみたいな顔をしている。

「……照れてる?」

「ばっ、そ、ういうことを言わないでくれないか!」

ぐい、と腕を引かれて教室を出る。真っ赤になった花京院くんは、早足で廊下を歩いて行くから、ついて行くのが大変だ。

「あっ、ひどい! バカって言った!?」

「……だってバカじゃあないか、そんな、承太郎なんかにヤキモチやいて」

僕だって心配だったんだから、とこちらも見ずに吐き捨てる花京院くんは、私と同じように不安だったんだろうか。
汗ばむ手を握り返すと、「君が反省するまで離さないから」なんて言葉が落っこちてきて、それじゃあ私、ずっとヤキモチ妬いててもいいってこと? なんて思ったら、なんだか笑みが零れた。

20180410


萌えたらぜひ拍手を!


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