それについての意味を簡潔に述べますとつまり
「やっぱお前味噌汁うまいわ」
「それは私を褒めてるの? それとも味噌汁を褒めてるの?」
「おかわり」
「はいはい」
そう言って差し出されたお椀にわかめの味噌汁を盛る私は本当に偉いと思う。誰か褒めて。ていうか村上さん褒めて。
「村上さん」
「ずず……」
「好きです村上さん。付き合ってください」
「やっぱお前味噌汁うまいわ」
「……それはプロポーズ? 一生俺に味噌汁作れ的な?」
「調子乗んなアホ」
がつんと頭をどつかれる。ちょ、私女子なんですけどとかあえて言わない。ていうか絶対言わない。
言っても意味ない。村上さんは私を女子だと思ってなんかないから。これっぽっちも。たぶん生ける味噌汁製造機だと思ってる。なんだそれ。そんなもんないよ村上さん。
「つーか大学生ってこんな暇なの?」
「大学なら去年卒業しましたよ」
「へー」
「今はフリーターです」
「ほー」
「将来の夢は村上さんのお嫁さんになることです」
「はー」
村上さんは基本的に私に興味が無いらしい。眼中に無いわけではないみたいだけど。だったらこんな、村上さんの部屋で味噌汁作ったりなんかしない。こんな通い妻みたいなことしない。でも悪い気もしない。
「村上さん結婚して」
「つーか40近くなるおっさん捕まえて何言ってんだおまえは」
「プロポーズしてるんだけど」
本当はされたいけど。
「村上さん年下嫌い?」
「嫌い」
「村上さん味噌汁好き?」
「好き」
「私のこと好き?」
「あ、サザエさん始まった」
ああそうですよねそうでしょうとも。
味噌汁とサザエさんに嫉妬。したとか言わない。あえて言わないんじゃなくて絶対言わない。
いくらなんでも中身がわかめだけの味噌汁と愉快なサザエさんに負けたくない。これだけは譲れない。
「村上さん好き」
「君はそればっかりね」
「だって」
好きなんだもん。私と村上さんの間にどれだけ有り得ないくらいのたくさんの壁があっても、好きなんだもん。
一生味噌汁作って終わってもいい。村上さんがそこにいてくれるならそれでいい。
だって好きなんだもん。
「村上さん」
「マスオさんってさ、いい旦那だよな」
「……」
「おかわり」
「もうないですよ」
だってお椀が大きいのに鍋が小さいんだもん。
「じゃーまた作ってよ」
「それはプロポーズ?」
「最近の若者は残念だなー」
「村上さん、」
何考えてるか分かんないよ。私は味噌汁作るだけで良いの?それともここにいてもいいの?
いつも連絡くれるのはなんでなの?味噌汁まだ?ってメールに私は期待していいの?
このままずっと、村上さんを好きでいていいの?
「村上さん、」
「んー?」
「私がもう味噌汁作らないって言ったらどうします?」
「困る」
「なんで?」
そして村上さんは真顔で答えるのだ。
「俺味噌汁作れねぇもん」
終着点はまだ見えない。
end
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神様の独り言 2010.7.1
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