貴方の言葉は、いつだって


鬱陶しいったらありゃしない。
愛だの恋だの恋愛だの。年下が好みじゃないとかそれ以前の問題なんだ。
俺は、人を好きになることはない。そう思って今まで生きてきた。
別にモテないからでも女に相手にされないからでもない。俺自身が、そういうものに興味がなかったんだ。

それなのに、ただ一人が俺の根底すべてを覆そうとしている。
そいつはただの学生で、俺はただの保健室の先生。
その関係だけで充分なのに、もやもやと俺を取り巻く梅雨の湿気のような気持ちが、じわじわと確実に俺の胸中を悉く支配する。
勘弁してくれと額を右手で覆えば、少し汗ばんでいて余計苛つく。

数日前にあいつを玄関まで送ったことがあった。風邪で弱っていて、仕方なしに手を引いてやったが、力なく握り返したあの小さな手の感触が忘れられない。

俺は愛だの恋だの恋愛だのに興味もないし好きでもない。互いの感情が複雑怪奇に絡み合うものは総じて面倒だからだ。
だが、気が付けばあの小さな手を繋ぎ止めておく方法なんかを考えてしまう自分が恨めしい。

いつからおかしくなったのか。
もしかしたら、初めから。
女々しくも、汗ばんだ右手から目が離せない自分に腹が立った。



この手は繋いだままだよ、君が離さない限りはね




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(C)神様の独り言 2010.7.1
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