「ユウ君ふせて!」


柳生の声が響いたかと思うと頭の上を銃弾が掠めた
振り返ると銃を構えた菊丸君が居た


「ユウ君みーっけ!……よくもあの時…」



笑顔になったかと思うとすぐに冷たい顔で次の銃弾を撃ち込んできた
柳生と僕は顔を見合わせて走り始める


やっぱり菊丸君は死んでなかった
あの時置いていった僕とジャッカルを恨んでいた
だけどジャッカルは既に死に、残っていた僕を…



「あの時すごい怖かったのに…痛かったのに…助けてくれないなんて!」


まるで夢を見てるようだった
よく夢ではこんなことあるけど
ここが現実だと言うのは今日と言う一日で何度も痛感した


「ユウ君!こっちです!」
『待ってやぎゅっ』


手を引かれてビルに入る
階段を駆け上がって菊丸君をやり過ごす為に物陰に身を潜めた


カツンカツンと菊丸君の足音が響く

「どーこかにゃぁ?」



体の震えが最高潮に達した
それを察知して柳生が強く僕を抱きしめた

「今の私じゃ嫌かもしれませんが…」


その痛々しい呟きに僕は何度も首を振った


「ここだにゃ!」


僕と柳生が隠れてる所を見つけた菊丸君は笑顔で僕達に銃を向けた


「ユウ君が悪いんだにゃ」




そう言って銃声が一発響いた



















痛くない
慌てて柳生の方を見ると柳生も心配そうな顔で僕を見ていた
目の前に菊丸君が倒れている


「ユウに銃を向けるなんざ、死刑確定なり」

『仁王!!』


立ち上がると銃を構えて扉に寄りかかる仁王が居た


居てもたっても居られなくなって仁王に抱きつく


「怖かったのぅ…」



頭を撫でる仁王からはちゃんと仁王の香りがして
もうペテンじゃないことが体中が証明した



『にお…っ、僕、う…っ』


全部の緊張の糸が途切れて訳が分からなくなって泣き始める
吐き出すように今までのことを全部話した

さっき柳生に話した時よりも自分が保てなくなって何度も嗚咽を上げながら話した


さっき冷静に話せてたのはきっと体がこれは仁王じゃないって分かってたんだ。と思った



その時一発の銃声が響く
仁王は一瞬にして僕を背中に隠すとその方向へ銃を向けた




「どう言うつもりじゃ、柳生」


眼鏡を掛けなおした柳生は静かに銃を下ろした


「もう少しで仁王君離れをさせることが出来たのに…」


溜息をついた柳生は再び銃を構えた

「貴方は尽く私の邪魔をしますね」


響いた銃声は仁王の頬を掠めた

「おまんに銃は向けたくなか」
「そうですか。それは嬉しいことです」


もう一発銃声が響いた瞬間僕と仁王は走り始めた
もう何度目の闘争だろう
ビルから脱出すると仁王が溜息をついて一発だけ銃弾を放った

銃が綺麗な筋を描き柳生の拳銃を弾いた




「おまんは撃ちたくないって…言ったなり」



右手から拳銃が消えて呆然とする柳生に仁王は静かに言った


「行くぜよ。俺達にはおまんが必要じゃ」
「"俺達"…ですねぇ…」



座り込んだ柳生は前髪を掴んで笑った


「良いでしょう。お供します。ですが私はいつか容赦なく仁王君を殺すかもしれませんよ?」

「その時は返り討ちしてやるぜよ」



仁王が歩み寄って柳生に手を差し伸べた
それを掴んだ柳生は笑って仁王と抱き合った



「行きましょう。私達はパーティーです」
「プリッ」
『うん!』



柳生が笑ったから
僕も笑った
僕が笑ったから
仁王も笑った


この狂った世界で
ようやく僕は安心できた






次回:最終章前編


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