描きたい−エガキタイ−
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授業中の暇な時間
暖かいこの一番後ろの窓際
漫画の中では一番目立つような人がよく座ってる席

だから他の席より特別な気がする

ご飯後の古典の時間
暖かさと満腹感で皆机とこんにちは

隣の仁王君だって例外じゃない
整った顔をこちらに向けて無邪気な表情で寝ている

仁王ファンなら堪らないだろう
写メってプリントアウトすればどのくらい儲けられるか、と悪い思考が巡る

それは少し悪人な気もするのでそんな考えを頭を振って落とす

しかし、あまりにも暇なので教科書に落書きをした

簡単な絵から段々本格的なものに変わる


デッサンも兼ねて仁王君のお顔を拝借した


しかも結構満足

『くそ、こんなんだったらちゃんとした紙に書けば良かった…』


絵描きさんなら誰でも経験する下らない紙に神降臨←


やめていただきたい


「なに描いちょるんじゃ?」

周り皆倒れてる中不意に言葉が聞こえ顔を上げてキョロキョロする


『あ、仁王君。おはよー』

寝ていた時と変わらない体制だったが目はばっちり私と合っている

―あ、このアングルいいかも。
心のカメラに留めておく

『落書きかな?』
「俺の顔見ながら?」
『それは申し訳ない』


これ使って次の文化祭の美術部出し物で金儲けしようとしてごめんなさい←


「あんま見んで欲しいのぅ」

見られたくないからこっち向いて寝てるのに―と仁王君は呟いた

確かに、私の方を向けば私以外は見ない訳だし…
寝顔を見られるのは私でも良い気はしない

しかもそれを金儲けにしようとするなんて…

色んな意味を込めてもう一度謝った

「そういえば九条と初めて喋ったかもしれんのぅ」



そう言われて気付いた


『そだね。仁王君なんか干渉されるの嫌いそうだし』


第一席替えで毎回嫌な顔してるのは知っている
女の子がうるさいからだ

あ、そう言えば私席替えん時もこの席を転売しようとしたんだっけ…?
つくづく金儲けに走ろうとしているが別に金欠と言う訳ではない、断じて


「そうじゃのぅ。嫌いじゃ。俺には九条が近寄り難い存在じゃったけぇ」
『え、嘘』
「ホンマ。ふわふわしてて何考えとるか分からん」
『私ほど分かりやすい人間居ないかと…』


詐欺師に何考えてるか分かんないって…
私周りからどんだけ不思議ちゃんに見られてるんだ


「んで、何書いてたん?」


するっと私の手の中から抜けて行った教科書

あー、やばい。それは見ない方が良いよ、仁王君



「……俺?」
『銀髪が光反射して眩しかったもので…』


意味の分からない回答
なるほど、ここが私の何考えてるか分からない部分か
お教えしよう、大変困惑している!←


「絵、上手いんじゃな。」
『美術部ですから。』


そりゃ上手いに決まってるでしょ、と調子に乗ってみる
忘れてはいけない、授業中なので小声で調子に乗っている


「今度部活見に来んしゃい」
『そうしたいのは山々なんですが、どうも女性の黄色い声が苦手でして…』


高い所からではありますが毎日部室から拝見させて頂いております



「動いてる俺が描きたくないんか?」
『え…?』


何故かすごく挑発的に笑っていらっしゃる仁王君


『か、描きたい…』
「ほな決定」


あっさりと決定した部活動見学

どうしよう、差し入れとか必要?


日頃の部員の薔薇話のお礼も兼ねて手土産くらい必要なのだろうか?←



「それから、」


まだ続ける仁王君に一度思考をストップさせる




「色んな表情の俺、描いてみたくないかのぅ?」



数分間だけで虜ななったニヒルな笑い

おかしいな
太陽は背中にしか当たってないはずはのに
顔が背中みたいに熱いや



「良い返事、期待しちょる」


それだけ言うと仁王君は調子が悪いからと教室を出ていってしまった




取り残された私
ペンを持っていた手が震える


色んな…仁王君…


『先生!体調悪いです!』



手を挙げて走り出した



早く、早く―!


『仁王君!』



振り返った彼

伝える言葉は





(色んな仁王君…描きたいです…)




仁王君は柔らかい表情で笑った…




おわり



     







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