ゆめからさめたゆめ
4/30

とんでもない
夢を見た


"におーっ!だいすきっ"
"俺もじゃよ"



暖かい陽だまりの中
地平線いっぱいにまで垂れ下がった大きな雲
そんな空を映し出すかのように俺達の足元には水が一面にあった



そんな中俺はどうしようもない感情を仁王にぶつけ抱きしめた
仁王もそれに応え俺を強抱き返す




とんでもない夢を見た



『ぐぁっはぁ!』


息は荒く呼吸が出来ない
髪を掻き分けて恥ずかしすぎる夢を頭から消そうと頭を振った




『なんちゅー夢だ…』



あろうことか親友の
しかも男に向かって愛の告白…


夢でさえ気まずかった




溜息をついて時計を見上げる


長針と短針が普段ならありえない所にあって悲鳴を上げた



『遅刻だぁぁぁぁぁぁっ!』



今日は真田の鉄拳決定


ものすごいスピードで制服を身にまとい俺は猛ダッシュで家から出た―






(ゆめからさめたゆめ)




「お、ユウ遅刻かぁ?」


ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべて来たのは赤い髪したガム大好き人間
通称
『デブン太おはろー』

「デブじゃねぇっ!」



俺が学校に着いたときは既に一時間目は終わっていて二時間目前の放課に突入していた



『あれ?仁王は?』


いつも一緒に居る、と言うわけではないが大概ブン太に引っ付いて行動している銀髪が見えなくて赤髪に聞く

お前等髪色中学生じゃありえないんだよっ!




「知らね、屋上でさぼりーたしてんじゃねぇの?」
『あ、そう。』
「聞いといてその返事なんだよぃ」


ギャーギャー喚くブン太の頭をぽんぽん撫でて落ち着かせる
―俺は子供じゃねぇ。と不満そうに頬を膨らませたブン太だったが内心ホッとしていた



あの夢を見て
やっぱり気にしてしまうのだ

夢と言えど仁王にご迷惑を掛けて申し訳ない


「本当にブンちゃんは騒がしいのぅ…」
『のわったぁっ!』



手に持っていた鞄をわたわたと空中で舞わせ
阿波踊り状態の俺を仁王はクククと笑った


「どうしたんじゃ?」
『ナンデモナイデス…』



久しぶりに
って言っても昨日ぶりに見た仁王は何故かキラキラ輝いて見える
そう、すっごいかっこいい…

ってこんなこと言ってちゃ駄目だ!


「おかしいのぅ…熱でもあるんか?」


ぴとっと仁王の手が俺のおでこに当たる
低体温の仁王の手から電流みたいに一瞬何かが走った後熱が集中した



『は、はわわわ…』
「ちょっと熱いのぅ…」
「マジかよぃ!」


―確かに顔赤いな。とブン太が頷く
違うんだよ
そう言う訳じゃないんだよ!



なーんて言える訳もなく…


「ブンちゃん、ちょっとユウを保健室連れて行くき、先生に言うといて」


ブン太は「おう!」と元気な声で答えると俺は仁王に肩を抱かれながら教室を出た




ドクンドクンと
うるさい心臓
聞こえちゃうかも―なんて心配、漫画だけかと思ってたけど
そうでもないらしい


とにかく
保健室に着けば先生居るし
寝てしまえばこっちのもの

しかしガラガラ―と開けた保健室に人っこ一人居ない


これはあれですね
やばいぱーたんですね
パターンではなくパータンですね



『…におー?俺大丈夫だからもう行ってていいよ?』


へらっと笑って仁王を牽制
今仁王の顔を見るのは恥ずかしい
なんていうか…意識するから…

本当に
あの時の夢のような仁王の笑顔が
俺のものだと勘違いしてしまいそうで…




「……なんでなん?」
『はい?』
「今日のユウ、なんか変じゃ」
『変っ?』


妙に裏返った声に仁王の表情は一層険しくなった


「目見てくれん、妙に俺を遠ざける」
『そんなこと…』
「あるっ!」

仁王から大声が出るなんて驚いて目を開いた



「俺、なんかした…?」


自分を隠す訛りも
自分を偽る表情も

全部全部取っ払った
中学生の仁王雅治がそこに居た

辛そうな顔して
俺に問う



『いあ…何も…』
「じゃあどうして」


どうして…って言われましても…



『……この話聞いても…引かない?』
「おん」



俺は意を決して話し始めた


『俺ね…夢見たんだ…』


仁王は静かに頷いた


『におーと俺が…』


そこまで言って頭からふしゅーと蒸気が出るくらい熱くなる




『俺がっ、におーに…好きって言って…
んで……におーも、俺が…好きって…』


―抱きしめた。と


『だぁぁぁぁぁっ!ほんっと、ごめん!勝手にこんな夢見て勝手に避けて』



顔の前で手を合わせて全力で謝る


『なんつーか…ほんと、ごめっ…』


何故かポロポロ涙が出てきた


『へ?あれ、なんで?』


拭っても拭っても涙が出てくる



「ユウ―…」


ふわりと仁王の柔らかい香りが動く

そしてその香りが強くなったのに気付いたらいつのまにか仁王の腕の中に居た



『あ?ん?ちょ…』
「黙りんしゃい」


両手をバタバタ動かして仁王から逃げようとした



「俺も同じ夢、見た」
『はい?』
「ユウが可愛くて、つい」
『いやいや、ついって!』


夢って
人と共有出来るものなの?



『それで俺…仁王が好きかも、って』


あんな夢見なければ気づかなかったのに

女にさえ抱かなかったこの感情



『にお…どうしよ…』


なんて仁王に言っても仕方がない


「それは、俺にしか治せん病気じゃけぇ。おまんは俺以外視界に入れなきゃ良か」

『に、お…』

「泣きなさんな、正夢になって幸せじゃろ?」


仁王の言葉に何度も頷いた



「ユウ、愛しとぅよ」



仁王の柔らかい笑顔

あのときの夢と一緒で俺まで幸せになるあの笑顔



「しかし、体調悪い理由俺じゃったとはのぅ…」



にたーと笑う仁王


『なっ!仁王じゃないし!』
「はいはい、少し寝んしゃい。」


ポンポンとあやされて頬を膨らます


暖かい日だまりの中
狭いベットで二人で寝て
寝起きの悪い俺等は
その後部活の時間まで眠ってしまい
結局、真田から鉄拳を食らったのでした―




おわり





     







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -