タイムスリップ
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二人にはさまれてねむるベットは温かかった
ふと目をさましてユウの寝顔が目にはいる
ユウの頬にふれようと手をのばして気付いた

自分の手がやけにとうめいだと

直感で分かる
おれがこの世界に入れる時間がもうすくないと―


ユウを起こそうかとも思ったがすやすや気持ちよさそうにユウを見てやめた
かわりに小さな手で頬をなでた



なにか
この世界にいた証がほしくて
おれがたしかにいたという証明がほしくて


きのうユウに教えてもらった覚えたてのまほうのことばをユウにおくった


「これをいえば、えがおになるんじゃろ?」


初めて他人にたいして
えがおでいてほしいと思った

なかないでいてほしいと思った


おっきいおれとそのたいせつな人



ぜったい
ぜったいみつけてやるけぇ
待っときんしゃい



そうしておれは来たときみたいに真っ白なせかいにつつまれた




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ふたたび目をさますと
泣き崩れた母親のすがたがあった


「雅治!」



それからおれは事故にあったとしった
でもいまはそれどころじゃない

はよ大きくなって
はよユウを見つけなきゃいかん


ひとつの目標が出来てから
俺の人生はいっきに変わった



テニスを始め
テニスで有名になればユウを見つけれると思って
一生懸命練習した


ユウに似たような姿を見つければ
柄にも無く走った


飄々とした態度を身につけ
人を騙し詐欺にかける事も出来るようになった中学1年の春



俺はようやく見つけた


あの日見た優しい柔らかい笑顔



何も言わずただユウに向かって歩き出す


周りは驚き、皆、俺を見た



「やっと…見つけた…」



あの時は俺のが小さかったんに
今はユウの方が小さい
俺を見上げるユウは困惑した様子で首を傾げた


あの日と一緒じゃな
俺をあの道で見つけてくれたあの日のユウも同じ顔をしていた



ずっと探してた
会いたかった




だけど―



「俺、仁王雅治じゃ。よろしくしてくんしゃい」

『…あ、九条ユウです。よろしく』



ようやく見つけた
守りたいと幼いながらに思ったこの笑顔



この先一生


何があってもこの笑顔を守り続ける




あの日ユウが俺を助けてくれたように

俺はいつでもユウを助けて行きたい―





幼い俺に



恋を教えてくれた君に―








おわり



     







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